「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

弁護士によるトラブル相談シリーズ/漏水事故対応のための立ち入り 拒否する区分所有者への対応は

Point

① 配管については、管理組合が管理を行うことができる。
② 漏水事故が起こった場合、管理組合は、専有部分への立入権(立ち入り請求権)を有する。

 ある住戸で漏水事故があり、直上階の住戸に補修工事に協力してくれるよう管理組合から依頼したものの、調査のために部屋の中に関係者が入ることを拒否されるケースがよくあります。
 配管が共用部分であれば、原則として管理組合の管理対象になりますし、配管が専有部分であれば原則として同専有部分の区分所有者の対象になります。
 ただし、縦管(主管)も横管(枝管)も構造上一体になっていて、横管のみ区分所有者の管理とすれば、非効率的で、不便となります。
 そこで標準管理規約21条では「管理組合がこれを行うことができる」と記述されています。
 また立ち入りの請求については、23条で「立ち入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない」とされています。
 すなわち、上記規約を根拠として、管理組合は当該区分所有者に対し、立ち入ることを請求し、同室において漏水補修工事を行う権利を有します。
 しかし、あくまで立ち入り請求権であって、強引に立ち入ることはできず、拒否する住戸に対しては法的手続きをとらなければなりません。
 このため、緊急性を要する場合は、仮処分命令の申し立てを検討すべきでしょう。

(大規模修繕工事新聞 125号)

<参考>
『トラブル事例でわかるマンション管理の法律実務』
著者/香川希理
発行/学陽書房
A5判・216ページ
定価/ 2,700円(税別)
2019年5月24日発行
ISBN:978-4-313-51167-5