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安心して住まう「コツ」とは /終の棲家」としてのマンションを考える

 分譲時、各住戸の部屋の広さは間取りとともに「専有面積」として表記されています。ただし、ご存知のようにベランダやバルコニー、玄関ポーチ、1階の専用庭等は、基本的に住戸の居住者しか使用しないにもかかわらず、「共用部分」として規定されています。緊急時の避難経路を確保する意味などから、誰でも通れるようにしておく必要があるためです。
 ベランダ等は共用部分の専用使用部分であり、特定の区分所有者が独占的に使用できる専用使用権が認められているのです。
 しかし、あくまで共用部分である以上、その使用は無制限に認められるものではなく、通常の使用の範囲を超える使用は認められません。
【裁判例①】
 バルコニーにパラボラアンテナを設置したことについて、それがバルコニーの「通常の使用」とはいえず、管理規約に違反するものであるとして撤去を命じた(1991年12月26日東京地裁判決)。
【裁判例②】
 バルコニーに物置を設置したことについて「緊急時の避難を妨げ、建物自体の維持・管理を妨げ、老朽化の原因となり、建物の美観を害するような利用は、その性質に照らしても予定されていない」として撤去を命じた
(1991年11月19日東京地裁判決)。

 BS・CS放送や新4K8K衛星放送の受信のためバルコニーに個別のアンテナを設置しているマンションが多くみられます。物干し台の設置や布団干し、ガーデニング、さらにはごみの放置など、トラブルになりやすい使用例は数多くあります。
 とはいえ「通常の用法」の範囲は固定的ではなく、マンションの立地、世帯構成、社会状況の変化等によって、マンションごとにさまざまな考え方を持つことが可能です。
 トラブルになる前に住まい方のルールを決めておくこと―それが「終の棲家」として安心して住めるマンションとなる「コツ」といえるでしょう。
  <参考文献:『管理組合・理事のためのマンション管理実務必携第2版』マンション維持管理支援・専門家ネットワーク編/民事法研究会発行>

(大規模修繕工事新聞 135号)

<参考>マンション標準管理規約
(バルコニー等の専用使用権)
第14条  区分所有者は、バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラスについて、専用使用権を有することを承認する。
第14条関係コメント
②専用使用権は、その対象が敷地又は共用部分等の一部であることから、それぞれの通常の用法に従って使用すべきこと、管理のために必要がある範囲内において、他の者の立入りを受けることがある等の制限を伴うものである。また、工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする。