組合側に外部修繕委員を招へい
今後は修繕周期延ばす長計を検討
マンション周辺には高い建物がなく、屋上にあがると見渡せば遠く富士山、東京スカイツリーが見渡せる。その一方で、隣接する新京成線の鉄粉、東京湾からの海風の影響からか、風が集中して舞う棟または部位によって劣化度合の差が生じていた。
目立っていたのは、バルコニーや共用廊下の天井の塗装の剥がれ、パイプスペースや消火栓BOXのサビ、エアコン室外機の排水を流すドレンレールの劣化など。管理会社が実施した建物劣化診断の結果で修繕の必要性を理解し、長期修繕計画のとおり築12年目で大規模修繕工事を実施した。
しかし、管理組合としては初めての大きな費用がかかる一大イベント。理事会は1年交代の輪番制で継続性がなく、管理業界のよくない情報も耳に入っていた。そこで修繕委員会を立ち上げ、さらに外部専門家に加わってもらうことにした。
修繕委員の三浦正彰さんは「もともと仕事上での信頼関係があり、マンション業界に詳しい人。コンサルタントではなく組合の内部に入ってプロの目で助言してほしいと外部修繕委員として依頼しました」と話す。
招ねかれたのは生活文化研究所の川端志行さん。大規模修繕工事等のアドバイザーとして、「知らず知らずのうちに損をしないように」と管理組合内部から支援する活動を行っている。
今回は修繕委員会で大規模修繕工事の進め方から指南。どのような発注方式があって、どのような工法で
どのような材料を使うのかなど、工事について素人の理事や修繕委員がわかりやすいように説明していった。
施工中は、監理者、施工者の話を管理組合に翻訳する役割を担った。発注者・監理者・施工者の三者定例会で協議する進捗状況や追加変更工事等についても、「この作業はこれだけの人工がかかる、だからこうしたほうがよい」など、組合側が納得のいく説明がスムーズな工事進行につながったという。
発注方式は設計・監理方式を採用。施工を請け負わないという管理会社㈱フージャースリビングサービスを設計・監理者とし、㈱ヨコソーを施工者に選定した。
業者選定においては、「価格に加え、複数の提案が理事や修繕委員のポイントになったようです」と三浦さん。内外壁にはサビに強い塗料を提案。またエントランスの自動扉化、インターホンセキュリティの更新(ハンズフリー電子錠採用)、共用照明のLED化など積極的な工事提案が選定された大きな理由になったという。
さらに現在、最も注意したのが新型コロナウイルス感染症対策である。㈱ヨコソーでは、工事説明会を動画投稿サイトのYouTubeに専用チャンネルを設け、パソコンやスマートフォンから視聴できる「工事内容解説動画」で配信。子ども向けの動画もアップした。
工事中は、マスク着用や手洗い・うがいの厳守はもちろん、現場事務所前には非接触型体温計を設置して場内入場前に検温するなど作業員への注意喚起を徹底。各階エレベーター前に自動のアルコール消毒噴霧器を設置したり、エレベーターの操作盤、その他作業員が通行する扉のドアノブや手すり等に定期的に除菌清掃を行うなど、コロナ感染対策には十分な配慮を施した。
第1回大規模修繕工事を終えた管理組合の今後の課題として三浦さんは「部材の耐久性など、修繕周期を延すことができるのかを含め、川端さんたちの協力を得ながら長期修繕計画の見直しを検討していきたい」と話している。
(大規模修繕工事新聞 第137号)