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コロナ感染症、終息見えず/Web会議での総会・理事会開催の考え方

 新型コロナウイルス感染症の終息が見えません。感染防止により3密を回避するため、Web会議等での総会・理事会開催を検討している管理組合は多いといえます。ただ、実際はWeb会議の理解に加え、管理規約にも具体的な実務の考え方についても規定を設けておくことが望ましいといえます。
 ここでは(一社)マンション管理業協会が定めた『ITを活用した総会の実施ガイドライン』を一部紹介します。
【基本的な考え方】
 会議体としての総会をどのように開催するかについては、議案の内容、管理組合の規模、IT環境の発展段階、区分所有者の構成(IT格差を含む)等の状況を踏まえて、各管理組合において望ましい手法が検討されるべきであり、決して、ITリテラシーの高い招集者がオンライン総会の開催を濫用的に行い、区分所有者が総会における出席機会を失うことがあってはならず、その観点から必ずしもオンライン総会が望ましいという方向性を提示するものではない。あくまでも、管理組合が自身の総会のあり方を検討するときの追加的な選択肢を提供することを目的とする。
①オンライン出席区分所有者の議決権行使方法
⇒ 事前に管理組合内で協議し、意思確認を担保できるルールを設けることが望ましい。
<具体例>
・(少数であれば)画面を通じた挙手による方法
・ 画面上の挙手は行わず、チャット機能や投票システムを利用して賛否の記録を残す方法
・ 通信の安定性、動画拡散リスクへの懸念等から、発言機会以外、画面オフでの運用も考えられる
②オンライン出席者(区分所有者・代理人)の本人確認
⇒ リアル総会の実務では、送付された「招集通知」を所持により、本人確認を実施している。
<具体例>
・総会招集通知の提示
・電子署名を付することとする方法
・あらかじめ割り当てられたパスワードを入力させる方法
・ 代理人の本人確認についても、適切な本人確認の方法を選択し、実施する
③オンライン出席区分所有者からの質問の取り扱い
⇒ 質問等を取り上げるための準備に必要な体制や時間を考慮し、総会を一つの会議体として運営するために、以下のような取り扱いが考えられる。
<具体例>
・ リアルと同様、画面を通じて挙手又は WEB 会議システムの挙手機能等を利用し意思を示すことで、議長の采配により質問者を指名することについて、あらかじめ運営ルールとして定め、招集通知やWeb上で通知する
・ オンライン出席区分所有者より、テキストで質問を受けることを可能とする場合、1人が提出できる質問回数や文字数、送信期限などの事務処理上の制約や、質問を取り上げる際の考え方、個人情報が含まれる場合や個人的な攻撃等につながる不適切な内容は取り上げないといった考え方等について、あらかじめ運営ルールとして定め、招集通知やWeb上で通知する
④通信障害等への対応
⇒ あらかじめの通信障害等への対策として、以下のような対応について、事前に管理組合内で協議しておくことが考えられる。
<具体例>
・ 招集者(管理組合)側が合理的な範囲において導入可能なサイバーセキュリティ対策
・ 招集通知やログイン画面における、オンライン出席を選択した場合に通信障害が起こり得ることの事前の通知
・ 区分所有者が総会にアクセスするために必要となる環境(通信速度、OSやアプリケーション等)や、アクセスするための手順についての通知
⇒ 通信障害等が発生し、出席又は決議への参加が不可能となった場合、発生段階・規模ごとに、以下のような取扱いについて、事前に管理組合内で協議しておくことが考えられる。
<具体例>
イ.総会の開会前に通信障害発生
・大規模(大半がアクセス不可):集会(総会)やり直し
・ 一部がアクセス不可:これは区分所有者側の問題に起因するのであれば、欠席扱いとするが、開催途中に、参加可能となった場合については、その審議より出席扱いとする
ロ.総会開会後の議案審議中に通信障害発生
・ 大規模(大半がアクセス不可):復旧の目途が立たなければ、決議のやり直し(=総会のやり直し)
・ 一部がアクセス不可:区分所有者側の問題に起因するのであれば、当該決議について定足数にカウントせず、通信が復旧した後の議案審議より、改めて定足数にカウントし、決議への参加となる。
⇒ 万が一の通信障害発生時に備え、補完的な手段(予備端末や予備回線の用意等)を持ち合わせることに加え、以下のような対応も考えられる。
<具体例>
・ 何らかの通信障害等により、参加が困難になった場合の連絡手段等を確保しておくことが望ましい(チャット機能の活用等)
・ オンライン出席者の議決権行使により、決議要件(過半数、3/4以上等)が充足することも想定されるため、一部の区分所有者側が決議に参加できなかった場合、通信が安定するのを待ち、開催途中に参加可能となれば、改めてその議案に対して決議を採る方法も考えられる.

大規模修繕工事新聞 141号