防水材、床材の製造・販売を手がけるメーカー・田島ルーフィング㈱では、設計事務所や施工会社等の関係団体および一般向けに、定期的なセミナーを行っています。そのセミナーの中から初級者を対象とした「防水改修の基礎知識」についてまとめました。アスファルト防水、シート防水、ウレタン防水の3回に分けて掲載いたします。なお、内容は国土交通省監修『公共建築工事標準仕様書』を参考にしています。
建築における「防水」とは
防水の定義は、建築物において雨水の流入・浸透を防ぐことです。
この建築における「防水」を大きく分けると、「メンブレン防水」「非メンブレン防水」の2つがあります。
※メンブレン(membrane)=英語で“膜”を意味する。
今回の防水改修の基礎知識シリーズでは、メンブレン防水(建築物に雨水の流入・浸透を防ぐ連続した被膜層)を取り上げます。
アスファルト防水とは、溶融アスファルトとアスファルトルーフィングを交互に積層して施工する防水を言います。
溶融アスファルトというのは、固まったアスファルトコンパウンドを200℃~ 300℃で加熱して溶かしたものです。溶融アスファルトを流しながら、巻物のアスファルトルーフィングを延ばして貼っていきます。この作業を一層、二層、三層と繰り返し積層していくのがアスファルト防水工法です。
■「実績」
そもそもアスファルトという素材は紀元前から防水材や接着剤として使われてきたといいます。使われていたのは、自然に発生している天然アスファルトでした。
1800年代後期からは、アメリカで石油から製造されるアスファルトを用いて防水材として使われました。日本においては平らな屋根が輸入された1900年代からで、1905年大阪瓦斯本社ビルを皮切りに、その後多くの主要な屋根で採用されました。
■「耐久性」
アスファルト防水は、数ある防水工法の中で唯一、積層ができるものです。積層することで防水に厚みが増します。
下図のように、落下物を落とす試験で、防水層に刺激を与えた際に、単層の防水層であれば簡単に下地まで穴が空いてしまいます。しかし、積層して厚みがあれば、表層は損傷しつつも下地までは傷がつきません。
これによって漏水を引き起こさないという特徴になります。
また、積層によるもうひとつのメリットは、上層で雨水の浸入があったとしても下層でそれを食い止めることによって、建築の内側への漏水を防ぐことができることです。これは単層のシート防水では難しいものです。
■「水密性」
ドロドロに溶けた溶融アスファルトを巻いて施工していくため、「不定形材料」となり、例えば躯体の凹凸の隙間やアスファルトルーフィング同士の層間を埋めるといった施工ができます。これによって雨水が浸入する部分を遮断して、高い水密性を保持できます。
これがシート防水では、隙間を埋める液体がないため、空隙(くうげき)が発生し、水密性はどうしてもアスファルト防水にはかなわないということになります。
■「均質な厚み」
この特徴は「定形材料」です。溶融アスファルトとは異なり、アスファルトルーフィングは工場で製造されたものを、そのまま現場で広げて貼っていきます。このため、工場で製造された、安定した一定の厚みを確保することができます。
塗膜防水と比較すると、塗膜防水は溶融アスファルトと同じように躯体の凹凸に馴染んで隙間を埋めるように高い水密性を発揮しますが、凹凸の凸の部分に関しても形どおりになってしまうため、その部分の防水層が薄くなってしまう恐れがあります。
また、塗膜材を現場で作業員が自分でまいて施工するので、防水層の厚みが現場施工の品質に委ねられ、下地の凹凸により厚みに差が生まれることになります。
その意味で、工場で製造された均質な厚みを持つアスファルト防水は、安心・安定した厚みのある防水であるといえます。
(大規模修繕工事新聞 第153号)