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管理組合修繕奮闘記/レイディアントシティ本郷台管理組合

  設計コンサル、施工会社を先導し
長期修繕委員会が大規模修繕を「見える化」

 課題管理のデジタル化

 IT社会が浸透していく中、「マンション改修業界の時代遅れ感は否めない」と話すのは長期修繕委員会の中山隆さんと富永進一朗さん。
 工事中の定例会では、課題に対して誰が何をいつまでに対応するのかといった報告書の作り方や運用がまったく不明確だったという。つまり、設計監理者や施工者に通じるだけのもので、管理組合に向けてのお決まりの報告会に過ぎなかったと感じたのだった。
 そこで管理組合から課題管理のデジタル化を提案。長期修繕委員会で工事や部位の用語統一を図るとともに、課題をすべてリストアップ・整理したものを作成した。
 これによりお互いに“言った言わない”の防止となり、課題の抜け漏れや停滞の抑止に成功した。
 課題管理は、大なり小なり約120件に及んだという。

検査プロセスの是正

 こうして課題管理を「見える化」したことで、品質管理も向上した。まず、管理組合の検収検査がセレモニー的で局所的になっていることに問題意識を持った。単なるイベントに終わっているのではないかということである。
 大規模マンションでは検査項目が広範囲にわたっているため、サンプリング手法による検査が一般的で、全体把握は行っていない。そこで、長期修繕委員会、設計監理者、施工者の三者で全館を巡回する品質管理表を作成。検査の抜け漏れや見落としを抑止し、メンバー全員で館内の全体傾向や補修の状況をデータで掴むことが可能となり、横並び確認等の実践につなげ、品質を固めることに成功した。
 実際に1つの工程の検査後に別の工事で汚れが発生したにも関わらず、すでに検査済となっているので見逃しとなるケースがあったという。
 施工者の現場代理人も「管理組合様からチェックリストとして検査項目を約5,200件抽出いただき、5日間をかけて検収検査を実施しました。不具合件数とその傾向や残作業項目、協議が必要だった案件などの可視化ができました」と感想を述べている。
 不具合指摘は要協議も含めて約400件。大半が塗装付着による汚れで、長期修繕委員会では「監理者、施工者は、機能上問題ないからと見逃しがちだった」との印象を持ったという。

今後の取り組み

 管理組合では、今回の大規模修繕工事の実績をもとに長期修繕計画を見直し、さらに経験したノウハウを資料として残すことで次の大規模修繕工事につなげていくとしている。
 一方、ハード面だけでなく管理組合運営にも積極的な行動をみせる。
 横浜市ではマンション管理計画認定制度について、11月から受付を開始する。同制度の認定取得も鋭意準備中だ。すでに今年2月に創設した「よこはま防災力向上マンション認定制度」は初の認定マンションとして、9月にソフト・ハードの両認定を取得した。
 「管理組合が主体的に両制度を取得することは、マンションの付加価値を高めるだけではなく、地域社会の共同利益にもつながる取み組みとなる」と委員長の中山さんは話している。

 

大規模修繕工事新聞 22-11-155号

取材を受けていただいた、左から長期修繕委員会の富永進一朗さん、同委員長の中山隆さん、横浜市会議員の輿石且子さん

品質基準に関する現場協議の様子

管理組合 現場巡回の様子

足場外観の様子