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防水改修の基礎知識③液状防水材で皮膜する『ウレタン塗膜防水』

 液体状の防水材を塗布し、硬化することで皮膜を形成するのがウレタン塗膜防水です。特徴は3点。塗膜防水ゆえの高い水密性、不定形材料ゆえの複雑形状への対応、ジョイント(つなぎ目)のないシームレスな仕上がりがウレタン塗膜防水の特徴です。

■ウレタン塗膜防水の特徴
 アスファルト防水と比較すると、アスファルト防水の特徴であるルーフィングの均一な厚みや、積層による耐久性などがなくなった代わりに、ウレタン塗膜防水では複雑形状に対応できたり、シームレスな仕上がりができるようになります。
 公共建築工事標準仕様書によるウレタン塗膜防水は、「通気緩衝工法」と「密着工法」の2工法があります。

 

 

膨れの発生を抑えるイメージ

■通気緩衝工法(X-1仕様)
 下地に通気緩衝シートを敷設してから、その上にウレタン材を塗布する工法です。
 通気緩衝シートによって下地の挙動や亀裂による防水層の破断を防ぎ、また膨れの発生を抑えることができます。
 日本では1965年ごろからウレタン塗膜防水が採用されはじめましたが、当時は破断や膨れが多く、1977年ごろに通気緩衝シートが登場して採用件数が増加しました。

 

 

 

 

 

密着工法では、メッシュ(補強布)を下塗りウレタンの上に置き、その上からウレタン塗膜防水を塗布する

■密着工法(X-2仕様)
 下地にウレタンを全面的に塗布する工法です。
 通気緩衝シートやシート防水といった定形材料を用いないため、狭小部位での施工性に優れます。庇やパラペットの笠木などでよく使われています。
 しかし、下地水分の逃げ道がないため、膨れが発生しやすく、下地の挙動や亀裂によって防水層が破断する恐れがある工法でもあります。
 そのため、施工する部位に非常に注意が必要な工法といえます。

 

 

 

 

目地上での破断
亀裂上での破断

■ウレタン塗膜防水の注意点
 下地挙動や亀裂による破断では写真のようなことが起こります。
 防水層が切れてしまうと、当然この場所から漏水の可能性がありますので、挙動が発生する大きな面積だったりする場合、ウレタン塗膜防水は通気緩衝工法で施工することを推奨しています。

 

 

 

 

 

 また、ウレタン塗膜防水には保護塗料の重要性があげられます。
 ウレタン塗膜防水材というのは、経年によって「減耗」、つまりすり減っていく材料です。
 ウレタン塗膜防水材に保護塗料を塗った場所と、塗っていない場所を残したまま、屋外に暴露した結果が下の写真です。
 保護塗料が残っていたところは、ウレタン塗膜防水層は健全だったのですが、保護塗料を塗らなかったところについては、暴露3年間で約0.6mmの減耗が確認されました。

 3年間で約0.6mm減耗するということは、10年間で2mm程度減耗する可能性があることになります。
 公共建築工事標準仕様書におけるX-2立ち上がり仕様は2mmという規定になっているので、X-2立ち上がり仕様に保護塗料を塗らなかった場合、10年経つと防水層が完全に消滅する可能性があるということを意味します。
 そのため、ウレタン塗膜防水については、保護塗料の性能が重要になってきており、高耐久や高反射の保護塗料が使われている理由となっています。

 

大規模修繕工事新聞 22-11-155号