●劣化現象
その5<外壁タイルの浮き>
タイルの劣化現象には剥落、浮き、欠損、エフロエッセンス、
ひび割れ、錆汚れ等があります。仕上材においては、タイルが躯体から剥離した状態を「浮き」といいます。
外壁タイルに浮きが生じ、下地のコンクリートやモルタルとの接着力(付着力)が低下すれば、剥落事故の危険性があります。
●調査・診断方法
一般的に打診棒(テストハンマー)でタイル面を叩き、打音で浮きの有無や程度を診断します。
一般的に診断時は手の届く範囲を部分的に打診し、そこから建物全体の劣化程度を推定します。
大規模修繕工事を行う際は、工事がはじまり足場をかけた後で、全面的な調査を行い、補修が必要となる範囲を確定します。
診断時に推定した劣化個所と、足場後の全面調査による確定した補修個所について、その数量の増減により精算することを「実数清算」といいます。
マンションは手の届く範囲が限られているため、この実数清算の差が大幅に変動することが考えられます。そこで、外壁タイルの非破壊試験として、赤外線法があります。
<赤外線法(非破壊試験)>
赤外線法(サーモグラフィー)は、外壁タイルまたは外壁モルタルと躯体部分の浮き状態を赤外線映像で測定するものです。浮き状態の部分は外気が入るため、健常部よりも温度が高くなります。
浮き部分と健常部との熱伝導の違いによる温度差を赤外線装置で測定し、手の届かない範囲の調査も可能としています。
近年、タワーマンションや高層マンションでは赤外線カメラを搭載したドローンを採用して調査を行うケースが増えています。
大規模修繕工事の際は、劣化個所の「推定」と「確定」の誤差を少なくし、実数清算の精度を上げることが赤外線法の大きな目的といえます。
また、特定建築物定期調査では外壁タイルなどにひび割れや浮き、剥落などがないか、建物全体のチェックが必要です。ドローンによる赤外線法の活用がますます増えていくことが考えられます。
大規模修繕工事新聞8月号(23-08)