16歳の命が伝えているもの」
赤とんぼの会代表
エレベーター事故被害者遺族 市川正子氏
再発防止に向けた主な対応
国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)エレベーターは突然上昇したのです。
その体は、かごの床面と乗り場の出入口の上の枠、その間に挟まれました。40分、750kgの重量が息子の体にかかり続けたのです。
突然起きた戸開走行事故。扉が開いたまま突然上昇した事故。たまたま偶然だよ、運が悪いんだよ、といった関係者がいました。
しかし、そうではありませんでした。
保守点検業者が制御のマニュアルを持っていず、保守ポイントも知らず、保守点検報告書には保守点検の問題や対策、ブレーキの状態がわかる数字・写真・データ・記載がない。これらの状況の中で、この息子の事故が起きたのです。
事故後、再発防止のためにも事故原因を調査する事故調査機関の必要性を訴えながら、様々な団体とともに消費者庁の設置運動に加わりました。
そして、やっとのことで消費者庁に消費者安全調査委員会が設置された2012年、金沢市でエレベーター戸開走行による死亡事故が発生しました。扉を開いたまま突然上昇したエレベーターの床面と上空口に、乗り込もうとしていた被害者の体が挟まれ亡くなったのです。
息子と同じような事故を二度と繰り返さないでと、46万人の署名を集め、既設エレベーターの危険を訴え続けてきた中での事故でした。
私たちは16歳の命から見えた利用者の安全、その安全を軽視することはできないのです。命の問題だと思っています。
いつものように乗り、目的階に止まり、扉が開き降り始めている最中に、扉が開いたまま突然上昇したら、皆様はどうしますか?逃げられると思うでしょうか。既設エレベーターを含め、すべてのエレベーターの安全が必要だと、16歳の命が伝えているものとして訴え続けています。
再発防止に向けた主な対応
国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)
港区シティハイツ竹芝の事故を受け、大きく4つの再発防止に向けた対策を行っております(表2参照)。
この中で、今回の説明会のテーマである④「昇降機維持管理指針」「エレベーター保守・点検業務標準契約書」は、平成28年2月に公表しています。
昇降機は大前提として、子どもやお年寄りの方も含めて幅広い方が日常的に活用するもの、常に安全であることが求められるものであります。また、昇降機は数多くの部品から構成される複雑な機械装置であるもの、適切な維持管理が重要であるものです。
一方で、専門的な知識を持たない昇降機の所有者・管理者が自ら点検などを行うことは困難なため、保守点検業者が契約書に基づいて定期的に保守点検を行うことが必要になります。
そこで、所有者の方々が適切に維持管理できるように、昇降機の維持管理指針、標準契約書を作成しました。
港区では、2006年に発生した事故を踏まえまして、2017年度より戸開走行事故発生時の対応訓練・研修を継的に実施していただいています。
関係機関の協力のもと、戸開走行事故に伴う利用者の挟まれ・閉じ込めなどを想定して、防災センター職員が事故現場の状況確認し、119番、エレベーター保守管理会社、港区へ通用するなど、事故発生から救出までの流れを、各場面で求められる対応を把握することで事故対応能力の向上を図っていただいております
大規模修繕工事新聞10月号(23-10)