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第66回管理組合オンラインセミナー採録(前編)/アルミ改修(窓サッシ・玄関ドア)で100年マンションへ

一般社団法人全国建物調査診断センターが2カ月ごとに主催している恒例管理組合オンラインセミナーの一部を紙上採録します。今回は10 月29 日にVimeo で公開した第66 回セミナー「アルミ改修(窓サッシ・玄関ドア)で100 年マンションへ」の前編です。過去のセミナーはVimeo により動画配信を行っています。全建Library からご視聴ください。

佐藤成幸筆頭理事:本日はアルミ建具、窓サッシや玄関扉について、対談形式で情報の提供を進めてまいりたいと思います。
 対談相手は、全建センターの中でもアルミ建具関係の分野に大変詳しい箕輪理事です。
箕輪貴弘理事:私はこのアルミ建具工事に関しまして10年間ほど携わってまいりました。その中で得たこと、感じたことなどを、ぜひこの場で皆さんにお伝えさせていただければと思っております。
佐藤:ここ最近、エネルギー費等の高騰ということで、特に電気代についてご視聴の皆様方等にとりましても頭を悩ませることが多いかと思います。
 そこで、熱効率を重視し、断熱性を図ることで、冷暖房費の節約を行う。そうした理由で、窓サッシ等の性能をアップする改良工事を採用している管理組合の例が多いと聞きます。
箕輪:窓サッシについては、これからお話しますLow-E複層ガラスを採用することで、年間1万7000円ほどの電気代の削減が見込める(使用状況により削減差あり)と算出されています。
 断熱性能を高めるために、ガラスを2枚にします。このガラスとガラスの隙間に空気の層を設けることによって、熱交換率を下げるわけです。
佐藤:冬は外が寒くても内側が暖房していれば、暖かい空気は外に逃げていかない。
逆に夏は外が猛暑でも部屋のエアコンで非常に涼しい、と。
 本セミナーの視聴者は高経年のマンションにお住まいの方が多く、窓サッシの改修時期(30年から45年ぐらい)、その適齢期に来ている管理組合が多いと思います。
 実際に視聴者の方がご自身のことと想定してもらえるよう、建具の性能、JIS等級等について説明してください。
箕輪:はい、わかりました。
 耐風圧性 “耐える風の圧力”と書きます。JIS等級はS-1からS-7とありますが、数字が大きいほど、風の圧力に対して耐えられる性能が高いことを示します。
 水密性 主に雨水に耐える性能です。屋内への雨水の侵入をどの程度妨げるかを示す性能です。JIS等級はW値で、数字が大きいほうが圧力に耐える性能が高くなります。
 気密性 サッシの隙間からどの程度の空気の出入があるかを示す性能で、JIS等級ではA値で示されます。基本的には、1㎡あたり1時間でどれくらいの空気が漏れるのかというものを示した性能値になっています。現在、改修で採用するカバー工法では一番良いA-4のグレードが採用されています。
 遮音性 屋内外への音の出入をどの程度遮ることができるかを示す性能で、JIS等級はT値で示します。カバー工法でT-4等級の窓サッシに改修した後は、救急車のサイレンの音(90dB以上120dB以下)が、窓を閉め切った状態ですと、「ほぼ聞こえない」状態まで小さくすることができます。
 断熱性 屋内の熱移動をどれくらい抑えることができるかを示す性能です。JIS等級はH値で示されます。部屋の中で熱移動が一番大きい部分が窓の開口部です。窓から冷暖房のエネルギーが逃げるわけです。これを少しでも削減するためにも、窓サッシでは断熱性能の向上が一番求められているというものになります。
佐藤:建具と言っても、実は製作されている段階でこうした基準をもとに、それぞれ必要とされる性能を定めて製作されているのですね。改めてご認識いただければと考えています。
 そして、時代の変遷で性能も様々に変化してきています。例えば1980年代と2020年代に建てられたマンションでの建具はどのような違いがあるでしょうか。
箕輪:1980年代ごろに設置された窓ですと、中桟が入っていたり、換気小窓が設置されているケースが多いと思います。また、シングルガラスなので、非常に結露が多かったりします。
 2020年代になると、中桟も換気小窓もなくなり、お部屋の状況にもよりますが、換気框が取り付くような形となってきます。
 大きな一枚物のガラスに変っているので、開口部がいかにも広いということで見通しもよくなっています。
佐藤:中桟?えっ、今そんなものないの?と思われた方、実に1980年代に近い設計やその年代に建てられたマンションにお住まいであるというふうにご認識してください。
 今や、上から下までガラスが一枚ボンとはまっているだけの窓が、もっぱらのトレンドです。
箕輪:その次、玄関ドアについてです。
 1980年代の玄関ドアは、握り玉と言われるものをひねって開けるタイプでした。ポストも非常に幅の狭いものです。
 これが2020年代のドアになると、取手はバータイプの縦型のハンドルで、プッシュプルグリップ錠になっています。ユニバーサルデザインで、高齢者や子どもであっても体や手の平で押すだけで開けられるものが主流です。
佐藤:昔は、見るからに“鉄板”と言われるような金属板で、メンテナンスも全面塗装を施すことで美感上の維持を図るしかなかった。それが昨今のドアは化粧鋼板で、表層も塗装ではなく科学的なシートが貼られています。
箕輪:また、40年前と一番違うのは防犯性ですね。玄関扉でもダブルロックで施錠するものがほぼ標準になっています。
 鎌デッドボルト錠は、鍵を閉めると同時に中からカンヌキのようなものが出て、それが玄関ドアの枠に引っかかるような形になります。
 サムターン錠についても今はスイッチ式となっています。スイッチを同時にしっかり同じ圧力でつままないと鍵が回せない構造ですので、非常に防犯性能は上がっていると思います。
<編集部=次号「後編」では、実際の改修工事における
留意点、補助金制度について、掲載する予定です>

大規模修繕工事新聞167号(23-11)