区分所有法改正とマンションの将来
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2024年4月5日付第499号「「論談」より
◆改正案国会提出へ
老朽化したマンションや団地、高齢化した住民を背景に、より適切な管理と再生を促進するとして、区分所有法改正が法制審議会でまとめられた。民法改正など他の重要法案との関係で今国会には提出されず、秋の臨時国会での審議が予定されている。
改正案の主要な柱として、建替え決議の合意割合の引き下げなど建替えプロセスのスムーズな進行が意図されている。
しかし、建替え要件を緩和したら直ちに建替えが順調に進むわけではなく、マンション再生など建物の長寿命化に期待する区分所有者も多く、合意形成に十分な配慮が求められる。国会でも住民・区分所有者の多様な状況を反映した慎重な審議を期待したい。法の改正にかかわって、マンションの将来を考えてみたい。
◆二つの課題
マンションが、住民の高齢化と建物の老朽化という二つの課題に直面していることは事実である。築後40年以上経過した団地が約3割を占め、単に物理的な劣化だけでなく、性能面でも社会面に劣化していることも間違いない。
3回目の大規模修繕工事を終えた団地では、4回目以降の大規模修繕工事を見据えた団地の再生・長寿命化計画を立てるか、建替えを目指すかという選択肢に迫られている。
◆将来ビジョンを
こうしたマンションの将来を考える際に重要なのは、それぞれの管理組合で、構成員が共通して持つ将来構想=ビジョンである。
マンションは、築40~50年でも建替え必至なところもあれば、100年あるいは、それ以上の展望を持って再生・長寿命化計画を持つことが可能なところもある。
それぞれの条件を考慮して、構成員の大多数が一致できるビジョンを自主的、自律的につくりあげることがカギである。法律の規定や管理業者の思惑ではなく、あくまでも管理組合の主導でなければならない。
管理組合でも改めて、マンションの将来を見直し、持続可能な管理と再生を実現していくことを期待したい。(NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞173月号(24-5)