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この弁護士が味方です!/理事も監事も「役員」で一緒に互選、こうした選任方法は適切?

 理事も監事も「役員」で一緒に互選、こうした選任方法は適切?

先日、当マンションで行われた定期総会での質問です。
 総会議案書の「役員選任」の欄には、10名の役員候補者の氏名と部屋番号が記載されているだけで、理事と監事の区別がされていませんでした。
 総会では賛成多数となり、総会後の理事会の議事録によると、理事長、会計担当理事等の各役職および監事の役員の記載がありました。
 当マンションの管理規約は、標準管理規約に準拠しており、「理事、監事は総会決議で選任する」「理事長等は理事会決議で選任する」とありますが、実際は理事長も監事も区別なく、「役員」として一緒に選任され、理事会で役職の互選が行われているのです。
 こうした選任方法は適切なのでしょうか?

監事の職務は理事会から独立、候補者を区別した運用に是正されるべき

役員の選任については、標準管理規約35条2項及び同条3項に規定があります。
 すなわち、標準管理規約35条2項では「理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから(*外部専門家を理事として選任できることとする場合は、この文言が削除されます)選任し、又は解任する」、同条3項では「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する」と定められており、互選で決定するのは理事の役職に限られ、監事は総会で選任しなければならないとされています。

 標準管理規約において、監事については理事による互選ではなく、組合員から直接選任されることが求められている理由は、監事の役職の重要性にあると考えられます。
 すなわち、監事は、管理組合の業務の執行が法令、管理規約等を遵守して適正に行われているか(業務監査)、また、管理組合の決算が法令、管理規約等を遵守し、管理組合の収支、財産の状況を正確に示しているか等を監査し(会計監査)、その結果を総会に報告する義務を負っています(標準管理規約41条1項)。

 さらには、管理組合の業務執行及び財産状況に不正がある場合は、臨時総会を招集する権限を有しており(同条3項)、理事に不正がある等の場合は、理事会の招集を請求する権限をも有しています(同条6項、7項)。

 このように、監事による監査によって、理事らによる専横行為等に歯止めをかけ、管理組合の業務や会計が適正なものとなることを期待されていることから、監事の職務は理事会から独立して果たされる必要があります。
そのため、明文の規定はないものの、監事と理事を兼任することはできないものと考えられています。

 なお、管理組合法人においては、明文(区分所有法50条2項)で、理事と監事の兼任が禁止されています。その趣旨はまさに以上に述べたとおりです。
 貴マンションにおかれましても、監事の職務の重要性に照らせば、まずは監事と理事の候補者をはっきりと区別し、監事は総会で組合員から直接選任されるような運用に是正されるべきであると考えます。

大規模修繕工事新聞176月号(24-08)