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消防用設備チェック&ポイント

消防庁が発表した令和5年における火災発生状況によると、昨年1月~ 12月の住宅火災は11,293件、このうち共同住宅は3,564件でした。住宅火災の11,293件を出火原因別にみると、「こんろ」1,744件(構成比15.4%)が最も高く、「たばこ」1,355件(同12.0%)が続きました。初期消火の失敗によって火災が広がった事例をよく聞きます。マンションにはさまざまな消防用設備が設置されていますが、操作を知らなかったり、管理を怠ったりすると、万が一火災が発生した場合、まるで機能しないという事態に陥ります。被害を最小限にするため、あらためて消防用設備の操作や管理組合の防災に関する取り組みをチェックしてみましょう。


チエック1◎いざという時、消火器、屋内消火栓を操作できますか?
・ 消火器は、出火元まで持っていき、ホースが出火元に向けられるのを確認してから、安全ピンを外して消火薬剤を放射します。
・ 屋内消火栓は、初期消火の器具で、住民が操作するものです。
・ 1号消火栓は2人以上で操作します。1人がホースを延長して出火元に向かい、他の一人が合図とともにバルブを開いて送水します。
・ マンションによっては、1人で操作ができる易操作性1号消火栓、2号消火栓を設置しているケースもありますので、確認してください。

ポイント消火訓練の場合、水消火器によるものがほとんどで、実際に粉末消火器を使う体験がほとんどありません。一方、屋内消火栓も操作を確認する体験機会さえありません。
 実際にホースの筒先からどのくらいの圧力で水が出るのか、体験してみるのとしないのでは大きく違うでしょう。敷地内外の消火栓からスタンドパイプによって行う放水体験でもよいと思います。年1回程度、訓練での体験が望まれます。
 消火器も使用期限切れになる際、単に新しいものと交換するだけでなく、粉末消火器を放射する企画を立ててはいかがでしょうか。

+プラスワン

チエック2◎専有部分内の感知器、交換は各戸任せですか?

・ 自動火災報知設備の基本的なシステムは、各階の共用廊下、階段等に設置された感知器から発信された火災信号を管理事務所等にある受信機で受け、火災エリア(警戒区域)のランプが点灯、各階にある地区音響装置(火災ベル)が鳴る仕組みです。

ポイント各住戸(専有部分)に設置された感知器について、一般的に機器点検は管理組合負担で、交換は区分所有者の負担となっているマンションが多いようです。
 ただし、マンション全体の自動火災報知設備の一部(共用部分の管理と一体となっている)と解釈し、10年周期の交換を長期修繕計画に組み入れ、管理組合負担としているケースもあります。
 通常の使用による故障などの修理は各戸負担としても、点検費とともに交換費も管理組合で持つとマンション全体がシステム化するといえるかもしれません。

+プラスワン

 

チエック3◎ 蛍光灯が生産中止。避難口誘導灯、通路誘導灯のLED化計画を立ててますか?
・ 水銀に関する水俣条約により、2027年までに蛍光灯の製造と輸出入の禁止が合意されました。
・ 経済産業省、環境省では、蛍光ランプを使用している設備等について、計画的なLED化を進めていくよう周知しています。

ポイント既に使用している製品の継続使用を禁止するものではありませんが、製造・輸出入が終了すると必然的に在庫も少なくなります。今後蛍光灯は在庫の値上げと品切れが予想され、LED照明も需要の増加から値上げが予想されることになります。
 照明器具の購入費用は管理費会計から支出となりますが、照明器具自体の取替えとして長期修繕計画に組み込み、計画修繕としてLED化を考えることも検討しましょう。
 消防法で義務付けられている避難口誘導灯、通路誘導灯のLED化も必要です。

+プラスワン
 誘導灯は地階・無窓階・11階以上の部分に設置することが定められています。また、災害等で電力が遮断された場合、自動的に非常用の予備電源に切り替わり、「20分以上」の点灯が義務付けられています。

 

 

 

 

 

 


チエック4◎管理組合で防火管理者を選任していますか?
・ 消防法上、防火対象物(=マンション)の管理権原者は理事長です。
・ 主に決まった人しか出入りしない一般的なマンション(居住者数50人以上)の場合、管理権原者つまり理事長は、防火管理者を選任し、防火管理業務を行わせなければなりません。
避難上必要な廊下、階段、避難口、防火戸などに住民の私物などを置かれないように管理するのは、防火管理者ではなく、管理権原者の役目です。理事会で対処する問題となります。

 


ポイント 防火管理者は自主防災の観点から当然、管理組合の役員や住民から選ぶのが本来の姿ですが、外部の資格者から選任することが認められています。このため、管理会社の社員、管理員等に防火管理上の必要な権限を与えて、防火管理者の業務を委託しているマンションも見られます。もちろん管理会社に委託する場合は、費用も発生します。
 一方、新しく役員になった組合員等に関心を持ってもらうため、管理組合の費用で防火管理講習を受けてもらい、順番で防火管理者となるシステムのマンションもあります。
 修繕工事もそうですが、防災活動はマンション管理に興味を持つきっかけになります。積極的に組合員から選任し、自分たちの生活の場を守っていくことを考えていきましょう。


+プラスワン

防火管理者は一定の資格を有する者から選出します。(一財)日本防火・防災協会や自治体で防火・防災管理講習を行っており、受講すると修了資格が与えられます。
◆ 甲種新規講習(参考:日本防火・防災協会HPより)
・ 講習時間:おおむね10時間(2日間講習)
・受講料:8,000円
・ 講習実施日は、日本防火・防災協会HPのほか、協会で実施しない
地域は各開催地の消防本部(局)、消防署に確認してください。

 

 

 


大規模修繕工事新聞175月号(24-9)