意義ある和解解決─グループホーム事件─
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2024年9月5日付第504号「論談」より
大阪高裁で審理されていたマンション内のグループホーム(GH)の立ち退き請求事件は、GHの利用継続を認める内容でこのほど裁判上の和解にいたった。
◇重要な大阪高裁の見解
和解内容については、大阪高裁が和解の前提となる裁判所の所見を表明したことが重要である。そこではマンションのGHとしての利用が、居住者の生活の本拠として使用されているか否かによって判断すべきで、当該規約にいう住宅以外の利用にはあたらないことが明確に述べられ、規約違反だとする一審の判断をハッキリと否定している。
◇今回の和解を歓迎する
当欄「論談」では、GHの利用を可能にする立場から、和解による解決を期待する見解を表明していた。
その点から今回の和解を歓迎し、ここに至った両当事者と裁判所の判断に敬意を表するものである。
管理組合規約がコミュニティの良好な関係を発展させる立場から「住宅以外の使用禁止」の立場を規定するのは当然であるが、その下で実状に応じた具体化が求められるのも当然である。
◇管理組合の社会的役割
管理組合は共用部分の管理とそれに影響ある専有部分の使用について、広範囲の自立性をもって、規約化やその他の管理上の判断を行う権限を持っている。
しかし、分譲マンションはなんでも勝手にできる独自の存在ではなく、周辺の住宅やその他もろもろの社会的環境の中で存在している。
障がい者や高齢者のGHがマンションを含む共同住宅の中に広がっている中で、それを受容できる社会的役割にも期待したい。
◇今後に向けての布石も
今回の和解条項の中には、法に基づく必要な消防設備費用の負担はGHが持つことや今後の費用負担の必要性が生じたり、GH拡張・新設の可能性が起こったりした場合などの協議も確認されている。
マンションにおいてコミュニティを良好に維持し、発展させていく上で、このGH裁判は、管理組合運営に大きな意義を持つと同時に、いろいろな問題を投げかけているように思え、検討をお願いしたい。
(NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞178号(24-10)