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この弁護士が味方です!/ゴミ屋敷の住戸、管理組合で管理できる? 管理不全建物管理制度とは…

ゴミ屋敷の住戸、管理組合で管理できる?
管理不全建物管理制度とは…

 私は築20年の分譲マンションに居住しています。
 私が居住する住戸の隣の住戸にはX氏が居住しているようですが、室内にはビニール袋に詰めたゴミやペットボトルなどが山のようにたまり、ゴミ屋敷と化しています。異臭が漂い、近隣住戸からも苦情が上がっています。

 最近になって改正された民法には、建物が適切に管理されていない場合に管理人を選任してもらえる制度ができたと聞きました。X氏の部屋についてもこの制度を利用して、ゴミ屋敷を解消してもらうことはできるのでしょうか。
 実際には、X氏が隣接住戸には居住しておらず、消息不明であった場合はどうでしょうか。

現行法上は義務違反者に対する措置で対応
法改正で所有者不明、管理不全の新制度創設!?

 「ゴミ屋敷」や「汚部屋」という言葉が社会的に定着して久しくなりました。ゴミで溢れかえった部屋から異臭や害虫が発生するような事態となれば、衛生上の観点からも資産価値の観点からも好ましくないことは言うまでもありません。

 区分所有建物においては、専有部分の管理はあくまでも当該専有部分の区分所有者によって行われるということが大原則となります。他方で、戸建てとは異なり、集合住宅という性質上、区分所有者も専有部分内で好き勝手にできるというものではなく、一定の制約を受けることになります。

 ご相談のような「ゴミ屋敷」などの管理不全建物に関しては、令和5年4月に施行された改正民法に「管理不全建物管理制度」(民法264条の14)という制度が創設され、この制度は管理不全状態に陥った建物の管理のために、裁判所に管理不全建物管理人を選任してもらって当該管理人に適切な管理をしてもらうというものです。

 ところが、残念ながら、区分所有法においては、区分所有者全員で管理組合を構成し、集会を開き、規約を設定し、管理者を置くことができるなど、建物の管理に規定が置かれていることなどの事情があることから、管理不全建物管理制度は区分所有建物には適用されません(区分所有法6条4項)。

 そうしますと、あくまでも区分所有法に定められた制度を用いてご相談のような事情の解決を図るしかありませんが、現行の区分所有法上の方策としては、X氏による専有部分の不適切な管理が共同利益違背行為に当たるものとして、義務違反者に対する措置(理事長による是正のための勧告や指示、行為の停止、専有部分の使用禁止、区分所有権の競売請求)によって対応することが考えられます。

 他方で、X氏が消息不明であるという場合は、同じく新たに創設されました「所有者不明建物管理制度」(民法264条の8)という制度を用いることができると良いのですが、やはり残念ながらこの制度も区分所有建物には適用されません。そのため、不在者財産管理人(民法25条1項)の選任申立が現実的には選択肢となり得ますが、申立には多額の予納金が必要となるなど、同制度も使い勝手の良い制度とは言いがたいのが実情です。

 なお、現在進められている区分所有法改正の議論においては、区分所有建物にも所在者不明建物管理制度や管理不全建物管理制度(あるいはこれと同様の制度)を創設すべきとの方向で議論が進められているようです。

 具体的にどのような手続きが必要となるのか、費用負担はどうあるべきかといった点も重要ですので、引き続き区分所有法改正の動きを注視してまいりたいと存じます。

大規模修繕工事新聞180月号(24-12)