全建センター給排水設備改修相談室・木村室長による「マンション給排水管改修工事『見積書の見方』」の3回目を掲載します。今回は<排水管>です。
詳しくはVimeoによる第71回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。
◆見積書の見方⑥
<全体工事費>から、「3共用部排水立て管更新工事」をピックアップし、内訳を表示しました。こちらも上の部分が「機器類や配管材等外部から買うもの」、下が「工事費」となっています。
ここで見ていきたいのは、「排水集合管」「既存立て管撤去工事費」「床引抜き補修費」。それと今回は室内の中にある共用部の排水立管を取り替えるので、内装の「便所壁開口復旧」が入ります。
そして、やはり最後に「試験調整」をしています。
◆見積書の見方⑦
「排水集合管」
「スリム型排水集合管」「排水集合管」と2段ありますけど、便器用の排水管が床上、雑排水管が下なので、見積書では2つを分けている形になります。
▶ 事例マンションの排水管システムは、汚水(トイレ)、雑排水(台所、浴室、洗面、洗濯)を1本でまとめて排水する仕組みだったため、今回の改修工事でも同様のシステムとするため、排水集合管を使用した。
◆見積書の見方⑧
「既存立て管撤去工事費」
今回の事例マンションの場合、立て管は雑排水台所の排水だけじゃなくて、トイレの排水も混じった配管です。
新築工事の時は、トイレといってもピカピカの排水管ですよね。だけど、事例は築41年です。
41年間、台所の排水やトイレの汚物を流したものがこびりつき、老朽化とともに汚れと匂いが付着した配管をノコギリで切断し、そのしぶきを受けながら撤去します。
職人は汚いものが室内に飛ばないように、暑くてもビニールの中にくるまって自分だけが浴びて、作業をしています。
このことは私、いろんなところで話しするたびに一生懸命説明しています。この排水管の既存立管撤去工事というのは、それほど不衛生な中でやっているのです。
今回の事例では、戸当たり28,000円とし、27戸(27カ所)×28,000円の756,000円を計上していますけど、すごく嫌な作業なんだということを、管理組合にもここはしっかり見てあげてほしい部分かなと思っています。
◆見積書の見方⑨
「床引抜き補修費」
今回の事例マンションでは、トイレの後ろに共用部排水立管がありました。その中にある排水管を取り替える「ハツリ工事」をするわけですけど、お部屋の中に入っている排水立管を取り替えるときは、配管が通っているコンクリートの床の回りを砕いて、配管を引き抜いて新しい配管を入れます。そうするとお部屋の中でまさに道路工事みたいな騒音、振動、粉じんが発生し、居住者の皆さまも工事会社にとってもストレスの強い作業となります。
しかし、住みながらの工事ですから、私どももこうした騒音、振動、粉じんをなるべく減らしていきたいと考えていまして、今回は油圧ジャッキでコンクリートに埋まっている古い配管を引き抜いていくというような工法を使いました。
今回、床引抜き補修費ということで戸当たり25,000円、27世帯で675,000円を計上しています。
◆見積書の見方⑩
「便所壁開口復旧」
マンションの給排水管改修工事の見積書では、内装工事に関する項⽬が出てきますが、この内装工事の工事費用については度々、管理組合と話題になります。
今回の事例マンションではトイレの後ろに全ての排水管がまとまって一本になっているので、お部屋の中のトイレの壁を壊して、配管を取り替えていくという作業です。
よく新聞のチラシなどで、「壁クロス張替え㎡●●●円~」と激安の工事費で勧誘している例がありますけれども、マンションにおいては、「1日に何件の入室作業と考えるか」で工事のボリュームが決まるため、価格の構成は㎡で考えるのでは
なく、作業量で考えるということが一般的です。
今回はビニールクロスは仕上げ10㎡程度でまとめて戸当たりいくらとし、戸当たり60,000円×27戸、1,620,000円で計上しています。
大規模修繕工事新聞 181号2025-1
給排水設備改修相談室長
全建センター筆頭理事:木村 章一
・一級管工事施工管理技士
・一級建築施工管理技士