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マンション関連判決例紹介/政党ビラのポスティングで侵入罪成立 目指せ!強盗に狙われないマンション

【事案の概要】

 平成16年12月23日午後2時20分頃、政党ビラを各住戸のドアポストに配布する目的でマンションの住宅部分へ侵入した被告が、マンション住民に呼び止められ、警察に不法侵入者(住居侵入罪)で通報された事案。

【マンションの建物概要】

 鉄筋コンクリート(RC)造・地上7階・地下1階建て。1階店舗・事務所部分と2階以上の住宅部分への出入口は完全に区分され、玄関ホールの掲示板には管理組合名義でチラシ投函禁止の掲示がされていた。

【最高裁の判断】

・刑法130条(住居侵入等)の罪は成立する。
・ 本件立入り行為が管理組合の意思に反するものであることは明らかで、被告もそれを認識している。
・ 被告人が立ち入った場所は、マンションの住人らが私的生活を営む場所である住宅の共用部分であり、その所有者によって構成される管理組合がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。
・ 管理組合の意思に反して立ち入ることは、管理組合の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものと言わざるを得ない。

【コメント】

 本件では、ビラ配布のためにマンション内へ立ち入った行為が正当な理由のない侵入行為に該当するか否かが争点となりました。
 判決では、本件マンションの構造および管理状況、玄関ホール内の状況、掲示板に貼られた紙の記載内容(「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」「当マンションの敷地内に立ち入り、パンフレットの投函、物品販売などを行うことは厳禁です。工事施行、集金などのために訪問先が特定している業者の方は、必ず管理人室で『入退館記録簿』に記帳の上、入館(退館)願います」)、本件立入りの目的などからみて、本件立入りが管理組合の意思に反するものであり、玄関ホール奥に設置されたドアを開けて本件マンションの廊下等に立ち入ったものであることなどに照らすと、法益侵害の程度が極めて軽微とはいえず、本件立入り行為について、刑法130条前段の罪が成立すると判断されました。
 過去の判例において、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、建物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、住居・建造物侵入罪は成立すると判示されたものがあり、本件もこの点を考慮して判断されたものといえるでしょう。
 ところで、マンションは、オートロック設備があるものが多く、セキュリティ的に戸建住宅よりも優れていると思われます。
 しかし、オートロックを過信するのは危険です。住人が解錠するのと同時に後ろからさりげなく侵入する「共連れ」と言う手口等により侵入されてしまうこともありますし、宅配業者を装ってオートロックを解錠させる手口も横行しています。
 昨今、闇バイトによる強盗事件が多発しておりますが、戸建住宅に限らず、マンションもその被害に遭っています。
 このような犯罪被害に遭わないようにするため、オートロック設備のあるマンションでも戸締まりを徹底するとともに、防犯カメラを設置し、人の出入りを監視することが重要でしょう。
 また、日頃からマンション内のコミュニティ形成に力を入れ、住民が顔見知りになることで、万一不審者が入ってきたとしても、その異変を察知することができるようになります。
 このような防犯対策に力を入れいくことは、犯罪被害を予防できるだけでなく、マンションの価値を高めることにもなりますので、積極的に取り組んで行くべきでしょう。


大規模修繕工事新聞184月号(25-1)