全建センター給排水設備改修相談室・木村室長による「マンション給排水管改修工事『見積書の見方』」の4回目を掲載します。今回は<専有部>です。
詳しくはVimeoによる第71回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。
◆見積書の見方⑪
<全体工事費>から、「4 専有部給水・給湯管更新工事」をピックアップし、内訳を表示しました。こちらも上の部分が「機器類や配管材等外部から買うもの」、下が「工事費」となっています。
専有部給水・給湯管更新工事からは、「架橋ポリエチレン管」「同上継手類」「洗濯用水栓」。それから、近年の専有部給水給湯管更新工事をやる上で主流となっている「点検口設置工事費」を取り上げます。
◆見積書の見方⑫
「架橋ポリエチレン管」
近年は、これまで使われていた金属配管ではなく、架橋ポリエチレン管、ポリブデン管といった樹脂系の配管に取り替えていく、という更新工事が主流になっています。
配管自体が95度まで耐熱ありますので、専有部分の給水管も給湯管更新工事も、このような樹脂系配管が使われています。
◆見積書の見方⑬
「共用部給水管の時も継手の話をしましたけど、この専有部の継手についても、写真の○印のところにあるわけです。
ちょっと細かい話ですけど、専有部の給水管、給湯管更新⼯事で使用する継手は、2種類<アダプタ継手と樹脂製継手>があります。
アダプタ継手は、専有部給水管、給湯管の樹脂管でいちばん末端の水栓(蛇口等)に接続するための金属製の継手です。こちらは水栓類ごとに取り付けるもので、住宅設備機器に接続するための最後の継手だけはどうしても金属製になってしまいます。そのためにこのアダプタ継手というものが別にあるわけです。
もうひとつの樹脂製継手は、床下の配管の曲がりや分岐で使う継手で、新規配管経路上の状況によって数量が変動しやすいため、共用部給水立管と同じように<率(%)>で計上することが⼀般的です。今回のケースでは配管材料費の300%が計上されているというような形になりました。
使用する配管材料費の合計
16,320円×300%=「同上継手類」48,900円
【率(%)の考え方】
今回の事例で、この専有部の継手については、300%が計上されています。これは見積もりをとった1社の内訳からとったものです。この300%は、どの施工会社も300%ということではありません。
各社の見積もりを並べて見たときに、継手がどういう率で入ってるのかって見ていただくと、各社の考え方がわかると思います。
◆見積書の見方⑭
「洗濯用水栓」
専有部給水管更新工事の場合には、洗濯機をいったんどかしたりという作業があります。そのときに「一度脱着したら元に戻しにくいもの」として洗濯機用の水栓があります。
古い蛇口がついているケースでは、先っぽをドライバーで締めているタイプのものが多い。今度工事終わって戻した時に、やっぱり老朽化していてなかなか元通りに戻すのが難しいんです。
なんとか戻したとしても、工事後にポタポタ漏れるっていうこともあります。
洗濯機のホースと洗濯機用の蛇口を接続してから、一度も脱着したことがない場合、洗濯機用の蛇口も老朽化して固着していることから、「再利用して工事後に不具合が出やすいところ」なのです。
そのため、近年は、今日ご案内するのはこのTOTOの製品ですけど、蛇口自体が水を止める機能を持っていて、全自動の洗濯機でも蛇口自体が止めてくれる製品が出ているので、専有部給水管更新工事の際は、こうした水栓も同時に交換することをおすすめしています。
◆積書の見方⑮
「点検口設置工事費」
近年の専有部の給水給湯管の取り替えは、架橋ポリエチレン管、ポリブデン管などの樹脂管で作業を行いますから、昔みたいに床を壊したり、壁を壊さなくても、隙間があれば、点検口から送り込んでいって作業ができるようになります。
昔は、壁一面を剥がすために大工さんが来て壁を壊して、次に配管工が来て配管して、また大工が来て壁を戻して、最後に内装屋が来て仕上げを行うなど、いろいろな工程が複雑に絡んで、何日もかかって、お金もかかっていました。
近年は、配管屋が自分たちで点検口を設置して作業してくれるから、工事期間も時間も短くなったし、コストも下がるようになりました。技術というか、材料の進化なんですね。
ただ、この点検口もなるべく目立たない個所に設置するよう工夫します。
例えば、バスタブをどかし、ふだんはバスタブに隠れている壁の部分を開口して配管を通す。そして点検口を設置して、バスタブを戻せば、どこも壊れていないようにみえます。
洗濯用の点検口でも、洗濯機の裏に点検口(事例写真では点検口2つ)を設置すれば、さほど気にならないといえます。
なるべく目立たないように計画するのですけど、やっぱり新築時になかった点検口を、後から付けていくとなるとクレームになることも結構あります。
このため、全戸入室調査の際、本物の点検口を持ってきて、「ここに点検口をつけますよ」と、そんな説明をしながら、居住者の皆さんに理解をしていただいています。
配管が、すべての住戸で同じ床の中じゃないこともあるし、壁の中じゃないこともあります。きちっと入室調査をして計画を固めていくっていうのが、この専有部の工事では本当に特に大事になりますね。
※次号は<最終回>として、「5 電気温水器排水トラップ更新工事」「6 共通仮設費」の見積もりの内訳を見ていきます。
大規模修繕工事新聞 182号2025-2

給排水設備改修相談室長
全建センター筆頭理事:木村 章一
・一級管工事施工管理技士
・一級建築施工管理技士
