

前々月の当欄(論談)「管理業者管理方式を考える」でA社が「管理者」となっている管理組合の規約の問題点を総括的に指摘した。
重大な問題なので、つづいて取り上げたい。
◇避けられない利益相反
管理組合との契約によって仕事をする管理会社が、管理組合の責任者・代表者である「管理者」になるのは利益相反であり、本来は認められないことである。
しかし、現在すでにファミリーマンションでも相当数で「管理会社が管理者」となっていることを考慮すれば、とりあえずそれらの管理組合の規約を、区分所有者による十分なチェック機能、監査機能、管理者交代の制度的保障などを最低限備えたものにすることが求められる。
◇監事を必ず置く制度化
A社の管理規約にはそもそも「監事」が設けられていない。「区分所有法には法人以外は監事の設置は義務付けられていない」ことは事実だが、これは総戸数2戸でもマンション関係が成立するという区分所有法の性格から書いていないだけで、総数2~3戸の場合ならともかく、本来必須の役職である。
とくに、「管理業者が管理者」のケースでは、区分所有者の利害と管理会社の利害とが相反する事態が生ずる。
だから、管理者が管理会社寄りにならないようチェックするには、監事の機能を強化するしか方法はない。区分所有者(あるいは専門家)の監事を必ず置くよう改めるべきである。
◇国交省は適切な指導を
マンション管理適正化指針は、区分所有者によって構成される管理組合が主体であることを明確にしている。この立場は、マンションの管理者に外部専門家を依頼した場合にも貫かれている原則であることはいうまでもない。
国交省が作成している「外部管理者方式」に関する「ガイドライン」においても、この原則が貫かれ、管理者に対するチェック機能の確立が求められている。
A社管理の管理組合では、監事の欠如、規約にA社名を入れる、区分所有者の総会要求への壁の設定など、逸脱が甚だしい。
国交省がマンション管理適正化法の精神を生かし、一般指導だけでなく、個別にも改善を図るよう指導に期待したい。
(NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞182号(252)