
1/5組合員の署名集めた総会招集も管理会社が名簿渡さず通知ができない!
中古で購入したマンションの管理組合が、20年以上長期政権を続けている理事長、イエスマンの副理事長、この二人きりでほとんどの運営をしていることがわかりました。
修繕工事の発注経緯で、「このような体制はおかしいのではないか」と、他の住民と話し合うことができたので、理事の任期制限を設ける規約に改正しようということになりました。
そこで、区分所有者の1/5以上の署名を集め、総会招集請求をするまでにこぎつけたのですが、区分所有者全員の連絡先がわからないため、総会の招集通知を発送できない状態で停滞しています。
管理会社に問い合わせたところ、「理事長の指示がないので、区分所有者名簿はお出しできません」という回答です。
理事長からは当然「こんな総会は認めない」と突っぱねられています。このような状態で、総会招集はどのようにすればできるのですか。
閲覧請求の拒絶は不可、規約確認の上、理事長へ粘り強く説得を
1.区分所有者(組合員)名簿の作成・保管義務
まず、ご相談のマンションが管理組合法人の場合、区分所有法において、管理組合法人は区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならないと定められています(区分所有法48条の2第2項)。
このように区分所有者名簿の作成及び保管が義務付けられている趣旨は、ご相談のような少数組合員による総会の招集通知を組合員に漏れなく発送することができるようにするなど、管理組合の運営を適切に機能させる狙
いがあるものと考えられます。
他方で、法人化されていない管理組合では、区分所有法上は区分所有者名簿の作成及び保管が義務付けられている訳ではありません。
ただ、標準管理規約においては、区分所有者には、その資格の取得及び喪失の届出を義務付けており(令和6年改正標準管理規約単棟型31条1項)、さらに、理事長には、区分所有者名簿の作成及び保管を義務付けられています(同64条第1項)。
ご質問のマンションが法人化されていない管理組合の場合は、当該マンションの管理規約を確認いただき、標準管理規約と同様の定めがあるかどうかをご確認ください。おそらく、多くのマンションでは区分所有者名簿に関する規定が設けられているものと考えられます。
なお、令和6年に改正された標準管理規約では、従来、区分所有者に住所変更が生じた場合に確認方法が定められていなかったため、組合員に対して届出事由に変更が生じた場合に直ちに書面での届出を求めたり、「区分所有権取得・喪失届出書」の雛形も定められるなど、区分所有者(組合員)名簿を充実させるための仕組みが盛り込まれています。
2.区分所有者(組合員)名簿の閲覧
上述した標準管理規約64条1項には、理事長は、組合員または利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、組合員名簿を閲覧させなければならないと定められています。他方、濫用的な閲覧請求を防止する目的で、理事長は、閲覧について相当の日時、場所等を指定することができるとも定められています。
ご相談のマンションにおいて標準管理規約と同様の規定がある場合は、組合員は理事長に対して組合員名簿の閲覧を請求することができ、理事長は拒むことができません。管理会社も管理組合から管理委託を受けている関係に過ぎませんので、理事長が閲覧請求を拒絶できない以上は当然にこれを拒むことができません。
なお、東京地方裁判所平成29年10月26日判決では、組合員が少数組合員の総会招集権を目的に組合員名簿の閲覧を請求したところ、管理組合は個人情報保護の観点から閲覧請求を権利濫用に当たるとして争いましたが、裁判所は、少数組合員の総会招集権は団体の自治の基礎となる権利であり、その行使には組合員名簿の閲覧が必要となることから、個人情報保護を理由に閲覧を認める規定を一般に無効とすることはなく、不当な目的での濫用的なものでない限りは、閲覧請求をできる限り広く認めるべきであるとの考えを示しました。
ご相談のケースでは、管理規約を確認いただき、理事長に対して粘り強く閲覧の必要性を説得するべきでしょう。それでも応じられない場合は、やむなく訴訟を提起することが考えられます。
大規模修繕工事新聞184月号(25-04)
