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区分所有法改正案の欠陥を指摘─ 所有権の転売で損害賠償請求権も「当然承継」になるはず 欠陥住宅全国ネット 第2回院内集会を開催

「共用部分の欠陥の100%補修ができない!」-区分所有法改正案が2025年通常国会(第217回国会)に提出され、審議されています。しかし、共用部分の瑕疵に対する損害賠償請求権について、専有部分の転売があった場合にその請求権が元区分所有者に帰属するという改正案を問題視し、弁護士、建築士、消費者団体らが国会での是正を訴えています。
 4月3日、参議院議員会館1階講堂で欠陥住宅被害全国連絡協議会(欠陥住宅全国ネット)とNPO全国マンション管理組合連合会(全管連)が「マンション共用部分の100%補修の実現を求める」第2回院内集会を開きました。その様子を取り上げます。まずは、弁護士、建築士、全管連メンバーによる寸劇から。


寸劇「欠陥マンション法の欠陥!?」
【プロローグ】
 Aマンションで外壁タイルが剥がれ落ち、大きな問題になった。管理組合としてはデベロッパーに責任追及をしたいと思い、理事長が弁護士、建築士に相談に行くが…。
~法律事務所にて
理事長:…そういうことで、こちらの事務所に相談に来たのです。
弁護士:このまま放置したら、通行人にも危険が及ぶので、応急対策をしたうえで、デベロッパーに対して、現実の補修か、金銭賠償を求めることになります。
建築士:今回タイルが落ちた場所だけでなく、全面打診調査が必要です。相当な費用が掛かるでしょう。
弁護士:金銭賠償の請求額は最終的には交渉次第です。ただし、いずれにしても共用部分の欠陥はみなさん全体の問題ですから、管理組合総会を開いて方針を固めていく必要があります。

~臨時総会にて
理事長:議案は、共用部分であるタイルの剥落に関する損害賠償訴訟の件です。
現所有者1:(挙手して)はい。タイル剥落は施工の瑕疵です。私たちのお金で直すなんてありえない!訴えるしかないでしょう!
一同:そうだ、そうだ。
旧所有者1:私は反対です。
現所有者2:あ、前の持ち主さん!あなた、関係ないじゃないですか。
旧所有者1:法改正で、前のオーナーにも反対する権利が認められたんですよ。 別段の意思表示です。
現所有者3:さては、デベロッパーからの回し者だな!
旧所有者2:私も旧所有者ですが、賠償金が入ったら分け前を下さいね。別段の意思表示です。
現所有者4:あなた、今、このマンションに関係ないじゃないですか。外壁タイルを直すためのお金ですよ。
旧所有者2:そんなの関係ないでしょ。これは、新しい区分所有法で認められた私の権利なんです!
現所有者5:そもそも、どうして、あなた達のような昔の人たちがここにいるんですか。 誰が呼んだんですか?
理事長:そ、それは、私です。通知すべし、という法律になったので…。
一同:え?そんな法律、おかしいよ。欠陥マンションの法律の欠陥だよ裁判で勝訴しても100%補修できない!?


欠陥住宅被害全国連絡協議会 代表幹事・木津田秀雄氏

裁判で勝訴しても100%補修できない!?
欠陥住宅被害全国連絡協議会 代表幹事・木津田秀雄氏
 今回の院内集会のテーマとなるマンションの瑕疵の承継問題については、日弁連の土地・住宅部会のメンバーと協力しながら協議を進めてきたところです。
 我々は、実際にタイルの剥落事故や行動に関する不具合など、マンションの欠陥の相談を多数受けております。
 日々、管理組合、区分所有者の方々と一緒に欠陥住宅問題に取り組んでいます。
 今回、旧区分所有者に共用部分の損害賠償請求権が残っているということを前提とした法案が審議されており、今のまま法案が可決されてしまいますと、欠陥で本当に困っているマンションが、たとえ裁判で勝訴しても100%補修できないという事態が生じてしまいます。
 マンションは社会が共有する一部という考え方からしても、社会正義に反するのではないかと私たちは考えています。

 

 


今回の法改正で困ったことになると懸念

NPO全国マンション管理組合連合会 副会長・野村善彦氏

NPO全国マンション管理組合連合会 副会長・野村善彦氏
 分譲マンションを購入した人は、専有部分を自由に使用する権利を得ると同時に、外壁や廊下、エレベーター、設備、配管などの共用部分を、区分所有者全員でお金を出し合って、維持・管理する義務が生じています。
 それを担うのが管理組合であり、その拠り所となるものが区分所有法です。今回の区分所有法改正において、共用部分の欠陥で問題が起きた際に、私たち非常に困ったことになるのでは、と懸念しています。
 管理組合が当事者になって、共用部分の100%の補修工事が実現する法改正にするべきだと思っております

求められる現区分所有者への「当然承継」

 区分所有権を売って出ていった人が、共用部分の損害賠償請求権を持ち続けられるなどという考え方は、共用部分の共有持分を分離して持ち出すことと同じこととなり、区分所有法の根本原則に反することになります。
 区分所有権が転売されれば、損害賠償請求権も当然に一緒に移っていくこと(当然承継)になるはずです。欠陥住宅被害全国ネットおよび全管連では、この「当然承継」があるべきだと訴えています。


大規模修繕工事新聞 2025-05(185号)

欠陥住宅全国ネット 第2回院内集会を開催

寸劇「欠陥マンション法の欠陥!?」