「大規模修繕工事新聞」は、一般社団法人 全国建物調査診断センターが発行するマンションの適正な管理に役立つ管理組合向けのフリーペーパーです。首都圏、関西圏の約30,000の管理組合に直接、無料で発送しています。また、同じ内容のメルマガ版は登録いただいた方に無料配信しています。当HPでは、「大規模修繕工事新聞」の過去から現在に至るまで、全ての記事を収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を左下の検索窓からキーワードを入れるだけで必要な情報を得ることができます。

自分たちで守るマンション地震対策

57-04-1

コンクリート造のマンションは耐火構造なので火災には強いですが、揺れが激しかったり、エレベーターによる閉じ込め事故が生じたり、マンションならではの地震対策を理解しておく必要があります。
大震災のときには管理会社や公共機関の助けを期待できません。被災生活を含め、どうしたら自分たちで守れるのか―集合住宅という居住環境で学んだこと、この環境の中で災害対策に取り組んでいることなどを、マンションの事例を通して紹介します。

事例1
Aマンション管理組合1983年竣工・7棟・420戸
≪2011.3.11東日本大震災で学んだこと≫

大震災により建物に入ったせん断亀裂(仙台市)
大震災により建物に入ったせん断亀裂(仙台市)

毎年、住民と防災訓練も行い、火災や震災については啓蒙し、それなりには有事に備えてきたつもりでだったが、3.11の東日本大震災を経験したことで、今までのことがほとんど役に立たないことを実感する。「無事確認カード」を玄関ドアに出した住戸は15戸/ 420戸だった。
大震災の当日はエレベーターへの閉じ込め事故が1件(1時間後に救出)。自動で遮断するガスのマイコンメーターの復旧方法がわからない、家具の転倒でドアが開かないという相談が多くあったが、対応が十分でなく、対策本部を翌日集会所に設置した。
住民向けマニュアルは作成し、配布していたが、管理組合や自治会などの組織として対応マニュアルはなかったので、大震災を機に作成した。
◎3.11で学んだこと
・ 階数、形状により揺れの実体感が異なり、室内の被害状況も違った
・14階より大きな被害が1階で起こった
・ 一時避難場所(対策本部)、救護所、相談窓口の開設は必須
・ パソコン、コピー機が使用できない。情報収集機器をいつでも使えるようにしておく
・ 照明機器、暖房器具を点検しておく。その他備蓄品の確認
・安否確認、周知・広報の方法を考えておくこと
・ 自分の身は自分で守る(自助)、地域のことは地域で(共助)、他所からの支援は数日後になる(公助)のPR
◎3.11後、住民からのアンケート
・ 停電によりセキュリティーロックが外れ、防犯面での不安があった
・ 停電で階段灯が消え、昇降に不安と困難を感じた
・ 管理組合からの告知や広報がなかった。防災マニュアルを作っておくべきだと思った
・ 管理組合で水・保存食などを備蓄しておけばよかった
・ マンション内で知り合いが少なかったので、もう少し顔見知りを作っておけばよかった
・ エレベーターが自動発電で動いたのがよかった

事例2
Bマンション管理組合
2003年竣工・7棟・426戸
≪大震災でも「死者0を目指す」取り組み≫

受水槽のパネルの欠損(仙台市)
受水槽のパネルの欠損(仙台市)

東日本大震災の経験は、これまで行ってきた防災対策がほとんど効果を発揮しないことを教えてくれた。
防災・減災の基本は「自助」の考え方と行動。それを補完するのが「共助」の精神で成り立つ「自主防災会」である。Bマンションでは「全住戸から1人の防災委員」を出してもらい、「隣近所の人々が役割を分担しながら力を合わせ助け合う」共助の精神で成り立つ自主防災会を結成した。
各住戸に最低1カ所の「安全ゾーン」を作ってもらい、その必要性を繰り返し徹底している。災害時、揺れがおさまり、在宅家族の安否を確認し、問題がなければ初期消火などの対応、避難要請と避難誘導を図る。「震災時・行動マニュアル」に従い、共助の活動を開始する。
こうした初期の防災行動の徹底が最も重要であるとして、毎年秋に開催している防災訓練では各戸への放送を通じ、「震災時・行動マニュアル」の手順の確認を実施している。
防災員の登録は結成初年度で95%に達した。3.11を経験し、大震災でも「死者0を目指す」新たな取り組み・防災対策を構築する。
◎自主防災会の初期対応と住民の協力
1) 震度5強以上の地震被害が確認された場合は、集会所に災害対策総合本部を設置し、災害救助活動を開始する。
2) 防災員の中からフロアーリーダーを決め、防災備品庫または消火栓ボックスに収納してある「震災時・行動マニュアル」に従って集合した防災員やその他住民を指揮して、災害救助活動を開始する。
3) 初日の活動は、初期消火、人命救助活動を優先し、安否確認を並行して行う。
4) 2日目以降、「震災時・行動マニュアル」に従い、災害対策総合本部と調整の上、必要な対策を行う。
5) 集会所の安全を確認後、臨時避難所と一時救護所を開設する。
6) 集会大震災により建物に入ったせん断 所には避難者用に100人・3日分の水と食料を備蓄している。
◎自主防災会の意識と機能を高める防災訓練
1) 毎年、すべての在宅者対象の防災訓練を1.5時間以内で効果を発揮できるように実施する。震災後は参加者が激増し、700人を超えている。
2) 2年に1度、防災員の担当者変更式を行う。主な目的は、同じフロアーの防災員が話し合いを通じて防災コミュニ
ティーを作ること。
3) 毎年、フロアリーダーを開催して自主防災会の結団式を行う。
4) 毎年、AED(自動体外式除細動器)の操作講習会を開催。受講者数は3年で230人を超え、住戸数の50%
を超えた。

事例3
Cマンション管理組合
2002年竣工・2棟・206戸
≪大震災時、そのときにいた防災委員は3人のみ≫

東日本大震災における瓦礫の山 (石巻市)
東日本大震災における瓦礫の山
(石巻市)

2011年、災害時対応マニュアルと安否確認用ボードを作成。マニュアルは自分のマンションの実情にあったものを一から作成することが重要である。作成する過程が訓練するものとなる。
東日本大震災時では当日集合できた委員は3人のみ(委員長、副委員長は帰宅できず)。マニュアル巻頭に、かぎの保管者、物資保管場所、機材操作手順書を載せており、だれでもすぐに機材の使用ができるようにしている。集まった人だけで対策本部を作り、臨機応変に対応できるシステム作りが重要。
災害時対応マニュアルは表紙を入れて全5ページ。シンプルで実践的な対応行動のみを記載している。
当マンションは免震装置がついているため、基本的にはマンションの倒壊はある程度防げると判断し、現在はライフライン(水・電気)の復旧までどう各自対応していくかを議論している。
・防災委員会の仕組み
2008年自治会下部組織として防災委員会を設置。現在は16人
・防災活動状況
防災訓練(年2回)
春季… 消防署主体の訓練(AED、消火訓練、三角巾、担架、起震車体験、救助訓練など)
秋季… 防災委員会主体の訓練(災害を想定した災害時対応マニュアルに沿った訓練)
・自治体の補助
これまでに補助金を利用して購入した防災用品は、防災用テント3基、発電機4台(管理組合で購入)、投光器3台、簡易トイレなど

【地震保険とは?】

地震保険は、損害保険の一種で地震による災害で発生した損失を補償する保険です。言い換えれば、地震による被害は地震保険に加入していなければ保険金は出ません。
一方、地震保険は独立の保険ではなく、火災保険に付帯する契約方式になっており、さらに主契約の30%~ 50%の範囲内で保険金を設定することになっています。つまり、被害があっても最大50%までの補償しか加入できないのです。
「地震被害は地震保険でしか賄えない、しかし、地震保険の適用は限られている」―理事会としては、大震災が来
る前に管理組合としての意思を議論、検討した結果を総会議事録などの記録に残しておく必要があります。後々に合意がなかったことへクレームをつける人が出てくる可能性があるので、その対策でもあります。

(大規模修繕工事新聞 2014-9.5 No.57)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA