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欠陥マンション・損害賠償請求事件

1007-07-12

欠陥マンション・損害賠償請求事件

瑕疵は設計、施工業者にも賠償責任あり!
不法責任、基礎・構造部以外でも追及可能

2007. 7. 6 最高裁
最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は平成19年7月6日、マンション建設の瑕疵について、設計者、施工者は瑕疵担保責任を負わないとして、マンション所有者である原告の損害賠償請求を認めなかった福岡高裁の第2審判決を破棄。差し戻しを命じた。
裁判長は「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、不法行為責任が成立すると解すべき」とし、違法性が強度である場合だけではなく、壁のひび割れ、バルコニー手すりのぐらつき、排水管の亀裂等についても違法性の余地があるとして、所有者側の訴えを退けた2審判決を破棄。あらためて業者側の不法行為責任の有無について審理のやり直しを命じた。
■事件の概要
事件の舞台は大分県の賃貸マンション。東京に本社を置く設計・監理者と、地元の施工者が工事を行い、1990年に完成。本訴訟を起こした原告が、そのマンションを建築主から約5億6000万円で購入した。
その後、外壁、共用廊下やバルコニー、駐車場の壁、居室内の床スラブや壁などのひび割れ等から96年、設計者と施工者を相手に瑕疵補修工事代金2億7000万円を含む、総額約6億4000万円の損害賠償請求訴訟を提起した。
1審判決は、設計者と施工者への瑕疵担保責任として、合計7400万円の損害賠償を命じたが、被告はこれを不服として控訴。第2審では、①設計者と施工者は原告と直接の契約関係にない②建物の瑕疵は耐力上の安全性について違法性はないなどと判断し、被告の不法行為責任を否定。最高裁へは原告が上告していた。
■最高裁判決の要点
• 建物の建築に携わる設計者、施工者は、契約関係にない建物利用者や隣人、通行人(居住者等)に対しても、基本的安全性に配慮すべき注意義務を負う
• 設計者、施工者は、この義務を怠ったために基本的安全性を損なう瑕疵がある場合、居住者等の生命、身体、財産が侵害される損害について、特段の事情がない限り、不法行為による賠償責任を負う
• 設計者・施工者の不法行為責任について、建物の基礎や構造体に関わるもの等としていたが、例えばバルコニーの手摺の瑕疵であっても、転落など生命または身体の危険になる要素もあり、基礎や構造体の瑕疵に限って認められるというものではない
■不法行為責任
不法行為責任(民法第709条)とは、故意・過失によって他人の権利を侵害し、他人に損害を生じさせたことに対する責任のこと。債務不履行責任と異なり、加害者と被害者の間の契約関係に基づかないことが特徴。
不法行為責任の損害賠償請求権は、被害者が損害等を知ったときから3年、不法行為から20年が時効。建築物品質確保促進法(品確法)は、「建物の主要構造部と雨漏り」は10年、それ以外は2年としている。
■解説
最高裁は、設計者・施工者に対し、直接契約関係のない建物利用者、隣人、通行人(居住者等)にも、基本的安全性への注意義務・不法行為責任を認めた。これは、原告当事者の範囲が緩和され、欠陥住宅対応への大幅な強化となったといえる。
区分所有法の改正により、「管理者」に対し管理組合を代表して当事者適格が認められたが、一般的なマンションは、築年数が進むと転売により所有者が変り、売主と売買契約を結んでいない人が増える。居住者に賃借人が増加する傾向もある。
判例は賃貸マンションのオーナーが原告だが、こうした管理組合が、建物の欠陥・瑕疵について、居住者等に対する基本的安全性の不法行為責任を、施工者等に求めることができるとしている。
契約関係でいえば、購入者個人でいえば売主との売買契約となるが、不法行為責任は契約関係に基づかないとしているため、設計者、施工者に対しても賠償責任が生じるとした。この点も、加害者の責任対象が広げられることは、管理組合にとって好都合となるといえる。
欠陥箇所への請求が品確法より長い20年という判決は、管理組合にとって朗報といえる。基本的安全性についても、建物の主要構造部分に限らず、たとえバルコニーの手摺であっても、利用者の生命や身体を危険にさらすものでありえるとした。品確法は、主要構造部分を対象に10年としているにも関わらず、である。
1ページ、6,7ページに住宅瑕疵担保責任保険の解説を掲載した。
建設時と同様、大規模修繕工事についても、今後は不法行為、賠償責任を問う事案が発生する可能性は少なくない。
(大規模修繕工事新聞 第07号)


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