NPO全国マンション管理組合連合会(全管連)は2009年秋の第59回全管連代表者会議で「省エネ・再生専門委員会」を設置し、マンション再生に関する方策の検討を開始。その結果、2010年春の第60回代表者会議で「マンション再生基本法(仮称)」を決議し、全管連構成全19団体の連名で国土交通省をはじめ、各政党、マスコミ等に対し「マンション再生法の提言」として働きかけている
背景と理念
新規供給から既存住宅の維持保全へ
住宅政策の転換の必要性を問う
わが国の戦後の住宅政策は量的な住宅不足の解消にはじまり、一貫して新規供給または建て替えによって住宅水準の向上を図ってきた。
近年は住宅基本法他、既存住宅の維持保全にも目を向けられはじめたが、これも新築住宅において一定の水準を得た住宅の保全がベースになっている。
マンションにおいては、区分所有法改正での建て替え条項の緩和、マンション建替え円滑化法の制定、長期優良住宅促進法の制定とその新築適用による認定基準、新築住宅への各種支援策、税制上の優遇策など、「新規供給と建て替え」を優先する政策と見ざるを得ない。
鳩山政権下で打ち出された「CO2の1990年度比25%削減」を住宅政策で示そうとすれば、新規供給の政策を180度転換して住宅ストックの長期使用をどうやって促進するかという政策に変える必要があるといえよう。
今日、既存住宅数はすでに世帯数を大幅に上回っており、さらに新たな住宅を供給するような政策を進める時代ではない。またマンションでは、建て替えのための合意形成も極めて難しい。
マンションの新規供給の下落や建て替えによる数少ない事業実績を求めるより、既存マンションのより長寿命化を目指す再生工事は、量的な実績も期待され、経済的効果も期待できる。
ただし、既存住宅のすべてが長期使用に耐えられるわけではなく、設備や居住システムなど時代のニーズに合った維持保全を行う必要があり、このためには「再生」を視野に入れた既存住宅の長期使用促進のための法的整備が必要になってくる。
全管連では、既存マンションをより長寿命化し、その間の社会的変化、社会的ニーズに合わせた「省エネ」・「改善による再生」等により、居住生活の水準向上を第一義とする住宅政策の転換の必要性を問うとともに、マンション再生法の制定を提言するものである。
(大規模修繕工事新聞 第17号)2011-05