大規模修繕工事新聞の発行元である㈳全国建物調査診断センター(全建センター、東京都新宿区、吉野笙一代表理事)と志賀塗装㈱(福島県いわき市、志賀昌文社長)は共同で、「高圧水洗浄機を使わない放射能除染工法」(特許申請中)を開発。
今年11月9日、(独)日本原子力研究開発機構の平成23年度「除染技術実証試験事業」に選出された。
日本原子力研究開発機構は内閣府の委託事業として「福
島第一原子力発電所にかかわる避難区域等における除染実証業務」を受け、平成23年度「除染技術実証試験事業」を進めてきた。同機構は、今後の除染作業に活用することができる優れた技術を発掘し、除染効果、経済性、安全性等を確認する観点から実証試験を行い、その有効性を評価するため、技術提案の公募を行っていた。
除染技術に関する公募結果は11月9日、全建センターと志賀塗装が共同開発した「高圧水洗浄機を使わない放射能除染工法」を選出したと発表した。
公募提案25社のうち、「高圧水洗浄機を使わない放射能除染工法」が9位の得点で選定された。工法の有効性が同機構に評価された形だ。
公共特殊建築物等の放射能除染工事に使われている水を使った高圧洗浄を一般住宅に転用した場合、現在、以下4つの問題点がある。
1) 建物の屋外壁の塗膜や素材には放射能汚染物が深く含まれ浸透、または結合している場合が多く、高圧洗浄の圧力では洗浄は不十分となっている
2) 住宅地では、高圧洗浄の水が飛散し、養生だけでは不十分で、近隣周辺に放射能汚染物を拡散させる恐れがある
3) 高圧洗浄に使用した水の処理方法が確立させておらず、また、その場所だけのスポット除染になり、近隣からの苦情の原因になる
4) 高圧除染来とデッキブラシ等で除染した後の屋根や外壁は、そのままにしておくと、表面劣化が加速され、新たな放射能汚染物がつきやすくなる
福島原発の除染作業により、見出した「高圧水洗浄機を使わない放射能除染工法」の技術を活用することにより、今後の除染作業をより一層効率的、効果的に推進することに期待が持てる。
こうした技術進歩がいずれマンションの外壁の高圧洗浄にも活用される可能性がある。日進月歩の業界の動向は注目に値する。
全建センターと志賀塗装は工法のさらなる充実を図るため、実績を積み重ね、「普及に尽力していく」としている。
(大規模修繕工事新聞 第24号)2011-12