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ペット訴訟・現在の判例の到達点は…?

ペット訴訟・現在の判例の到達点は…?

ペット問題はマンションで起こるトラブルの筆頭に上げられ、管理組合にとって頭痛のタネのひとつだ。今回の「判例の広場」コーナーでは、裁判所の判断基準となりえる代表的な判例を取り上げながら、横浜マリン法律事務所の石川恵美子弁護士に、ペット訴訟における現在の判例の到達点をまとめてもらった。
【一般的なペット訴訟の争点】
ペット飼育禁止規定のあるマンションで、禁止規定を優先させるか、あるいは飼育の実態を優先させるか
【裁判所の代表的な判断】
1) 全面的にペット飼育を禁止する規定を設けている管理規約も、有効である
2) ペット飼育禁止規定があるにもかかわらず、ペット飼育をしている飼い主が「具体的な被害が発生していない(共同の利益に反していない)」などとする抗弁は、認められない
3) 盲導犬など、動物の飼育が飼い主の日常生活・生存に関して不可欠な意味を有すると客観性をもって認められる場合は、ペット飼育禁止規定があっても、ペットの飼育は認められる
判例① 禁止規定優先、飼育者への承諾不要
    1994・8・4 東京高裁
(判例要旨)
ペット飼育について、「一律に禁止する」という規約改定が、「当然のように無効である」とは言えないとした事例。飼い主は規約改定前からペットを飼っており、具体的な被害が発生していないことから「一律に共同の利益に反する行為ではない」などと抗弁していた。だが裁判所は、具体的に他の居住者に迷惑をかけたかどうかにかかわらず、飼育自体が管理規約に違反する行為で、区分所有者の共同の利益に反する行為に当たると
判断した。また、飼い主は当該規約の改正が「特別の影響を及ぼす」から飼い主の承諾が必要であると主張ししたが、飼い主の生活・生存に不可欠のものではないため、「当てはまらない」とされた

判例②
「飼育中一代限り」決議以降の飼育に差止命令
1998・3・26 最高裁
(判例要旨)
飼育中の犬、猫一代限り、その飼育を認める旨を決議し、管理組合の指導のもとにペットクラブを設立したマンションで、それ以降に犬の飼育を開始した区分所有者に対して行った犬飼育の差止請求が認められた事例。飼い主の行為が管理組合に訴訟提起を余儀なくさせたことは不法行為を構成するとして弁護士費用の一部も支払いを認めた
【裁判所はなぜこのように考えるのか】
1) マンションは、隣近所の住居が密接しており、騒ぎのない共同生活を前提としている
2) ペットの対象は、飼い主の主観によって多様で、必ずしも一般的に愛玩するべき対象といえない動物もある
3) ペットへのしつけの程度は、飼い主によって千差万別である
4) 生態や習性、そのペットの存在自体が、他の入居者に不快感を与えることがある
5) ペットの糞尿による汚染や臭気、病気の伝染や衛生上の問題、鳴き声の騒音、かみ傷事故など、無形の影響を及ぼす
6) ペットによる具体的な被害とは何かという判断は極めて相対的なもので、「無形の影響」を考えると、実害の有無を表現することは現実的でない(例えば、存在自体に嫌悪感を持つ人もいる)
7) 上記のような禁止規定の理由から、禁止規定がある以上、飼育方法に規制を加えたとしても限界がある
ルールは住民の生活があってこそ自分たちで決めていくことが肝心
【コメント】
ペット訴訟は、密かに飼う人がいるために、管理組合内部に深刻な対立を生み出し、訴訟に発展する流れとなる。ところが裁判になっても、裁判所に和解を勧められて終わることが多い。
不毛な争いをするくらいなら、よくよく話し合って、多くの人の納得が得られるようにすべきだ。
ペットが生活の支えという人もいる。動物アレルギーの人もいる。その中で、落としどころはどこにあるのかを見つけるためには、言いたいことを言い合うことが必要である。対立はダメ。紛糾しないように議論の限りを尽くしてほしい。
規定やルールは住民の生活があってこそ。ペット飼育を解禁するに当たっても、住民の合意が絶対条件だ。仲良くやっていくためには、どんなルールが必要なのかを、自分たちで考えて決めていくことが肝心である。

(大規模修繕工事新聞 2013-8.5 No.44)


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