第三者管理の前に区分所有者の掘り起こしが基本前提
国土交通省が1月10日、第1回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」を開催に際し、NPO法人よこすかマンション管理組合ネットワーク(よこ管ネット)監事・東要(あずま・かなめ)氏が、学者や弁護士などの中に混ざって専門委員として選出され、管理組合・マンション住民の立場としてただ一人参加しました。1ページ参照。
そこで、東さんがあいさつとしてお話されたことを要約して掲載します。常に国の経済情勢や業界動向を前提に話を進める行政
が選ぶ学者、弁護士、業界関係者らに対し、「現場の声」を発してもらいました。
国のやることはマンション建替えや第三者管理方式の法的優遇など、だれのための政策なのかわからない方向にどんどん進んでいます。マンション住民は自分たちの利益を守るために声を合わせなければならないのではないでしょうか。
東さんのご意見を読んで現場の声が少しでも行政に届くようにしてもらいたいものです。
私のマンション管理に関する経歴経験は築13年のマンション管理組合の理事長を務めているということと、「よこ管ネット」役員を続けているということです。
その経験の中で一般にマンションには3つの大きな不公平があると思うようになりました。
1.駐車場の固定化
2.不在区分所有者の管理組合業務の無負担
3.管理組合役員の無償奉仕論、ボランティア論
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駐車場の固定化について申し上げますと、100%の充足率ではないのに最初のクジに外れた一部の人が、後は空くまで待たされることが当り前のようになっていることに疑問を持ちました。
なぜ規約の中に、駐車場は○年毎の抽選にするというような条項がないのか、共有である敷地の利用法が著しく不公平ではないかと不思議に思いました。
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二つ目の非居住区分所有者の組合業務無負担については、理事長を引受けてから気が付きました。
総会通知や組合報の発送、アンケートの回収等について多少は切手代や電話代もかかりますが、その額は知れたものです。
しかし、手間が馬鹿にならず、ろくに返事ももらえず督促すれば面倒くさがられ、それに米軍基地のある横須賀という土地柄外国人賃借者が多いのですが、ゴミの不始末などルール違反が絶えず管理が大変です。
組合活動の結果、得られた利益は不在区分所有者も平等に受け取り、これで組合業務の負担が全くないことはどう考えても不合理で、役員を真面目に務めれば、誰でも当然に気が付く不公平です。
もちろん、在住の区分所有者の中にも役員をやらないで済む人も出てくる可能性があり、それとの整合性が必要ですが、全く管理に無関心で「管理会社に任せておけばいいんだ」「余計なことはするな」と言わんばかりの、マンションを投資物件としか考えていないような少数の不在区分所有者には怒りを覚えることもあります。
2010年1月の最高裁判決で、住まない区分所有者への管理費増額は適法という判例が出て、不在者に対し協力金を求めることが一気に進むかと思いましたが、それほどではないようです。
規約の中に不在区分所有者の管理義務についてもう少し具体的な条文ができないものかと、これも不思議に感じていました。
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三つ目が役員の無償奉仕論・ボランティア論です。
まず、管理組合と管理会社の業務の違いを理解せず、管理会社が入っているマンション管理は管理会社に任せておけばよく、委託費の他に役員にまで手当などとんでもないという感覚で、ボランティアでやるべきことと思いこんでいる区分所有者が大半です。
また、なまじ手当などもらうと責任が重くなると心配をする区分所有者もいるし、規約以外にも参考書を読んだり講演を聞いたりセ
ミナーに出たり、そんな面倒なことをするためにマンションに住んだわけではないという区分所有者もいます。
ある意味当然のことですが、「それならばマンション管理士など外部に助言者を求める方法もありますよ」と言っても、報酬を惜しみ知識情報不足を自覚せず、かなり多くの区分所有者がそれももったいないというのが一般です。報酬どころか、参考書代や管理組合ネットワーク加盟費を惜しむ役員も珍しくありません。
無償奉仕論の最大の欠陥は、ボランティアだからやれる人やりたい人が当然にタダでやればいいということで、いつまでも無関心な区分所有者が、マンション管理の必要性、管理組合活動の重要性に気が付かないというところにあります。
このことが多くのマンションで管理修繕を管理会社任せ業者任せにし、費用増大の元になっており、しかもそれがすぐには分らないというところが問題です。
今、私のマンション管理に関する最大の関心事は、どうしたらもっと一般の区分所有者がマンション管理に関心を持つようになるのだろうか、管理組合は管理会社を上手に使うことが仕事なのだと理解してくれるのかということです。
理事になってもほとんど欠席ばかりの人や、総会の出欠も出さない区分所有者も少なくなく、これでは一向に理解が広がらず不公平が生ずることに気が付き、それへの対応として役員手当を考えました。
手当は業務の対価という意味ももちろんありますが、それ以上に管理無関心層の注意を引くことが目的です。もちろんそれで万事解決とはいきませんが、しかし、手当支給基準を理事会出席ということにすれば出席率もよくなり、管理無関心層も少しは注目するようになるかと思います。
もちろん支給に至るまでの経過は大変で、当マンションの総会では理事長委任状で辛うじて成立させ、現在3年余り経過して何とか理解も進み定着しつつある状況です。
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今回の会合の目的は、専門家の活用と第三者管理者方式が主となるようです。それを否定するつもりはありませんが、それ以前に区分所有者のマンション管理に対する関心をもう少し掘り起こすことが基本前提だと考えています。
マンション適正化指針では、「区分所有者等は管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある」と言っており、私も全くその通りだと思い、初めて読んだときは感激した覚えがありますが、残念ながらそれを具現化するための手立て道筋が分りません。
せっかくマンション管理適正化推進法ができ、マンション管理士制度が発足したのに、十分に活用されているとは言えず、指針の実現が全く不十分なまま次の段階に進められるようで理解し難いところがあります。
専門家の活用や第三者管理方式を実施した場合でも、最低、区分所有者による監査点検等は欠かせないものであると思いますし、一部には理事会も不要になるような情報もありますがそれで本当にいいのだろうかと思っています。
良好な住環境の確保には、区分所有者間の負担の公平化が欠かせないと思いますが、以上に述べたような不公平是正をしようとすれば、負担増を嫌い、既得権を持ち出したり、善意とはいえ視野の狭い知識情報不足を自覚しない反対が必ず出てきます。
負担の公平化は管理組合の大きな仕事であると思いますが、そのための規約・コメントからの支援がまだまだ不足していると感じています。
<東要(あずま・かなめ)さんの意見要旨>
(大規模修繕工事新聞 第26号 2012-02)