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分譲マンションは「大崩壊」するのか!

74-21 2015年8月と12月、高経年化、空き室の増加、賃貸化などから、マンションの未来はスラム化に向かっているのではないか、という書籍が発行されました。2冊とも都市居住形態として大量供給されたマンションの現状を的確に分析し、マンションのスラム化の危機を訴えています。大きな問題は何か、解決策はあるのか―一読の必要がありそうな2冊を紹介します。

2020年マンション大崩壊

米山秀隆/著 文藝春秋/発行 文春新書1039・256ページ 2015年8月20日発売 ISBN978-4-16-661039-6
米山秀隆/著
文藝春秋/発行
文春新書1039・256ページ
2015年8月20日発売
ISBN978-4-16-661039-6

冒頭、バブル期に売れたリゾートマンションから人が減り、点検や修繕はなおさら、処分もできない状況からはじまります。次いで地方のみならず、都心でも空きマンションが増え、それが放置される実態を説明しています。
相続人が全員相続を放棄する例も増えています。管理費・修繕積立金の滞納が多いマンションほど、老朽化が激しく、市場における流通性に欠ける物件が多くなります。
修繕費の負担ができないマンションの行方はどうなるでしょうか。大規模修繕が実施できない、必要な修繕がなおざりになることによって、マンションの資産価値の劣化が早まり、さらに売却が難しくなります。築40年以上を経過したマンションが増加する中、建替えもできず、敷地売却をするにも解体費用さえ出せず、ただスラム化していくだけということになります。
そうしたマンションの問題点は、新陳代謝が行われず、高齢者だけが残る区分所有者の合議制による管理運営だと指摘しています。高齢者ばかりの管理組合は「自ずと限界がある」というのです。
本書では、解決への処方箋として、マンションは本来「賃貸」資産であり、そのために住戸の買取再販、多用途への転用などを提案しています。
さらに結びとして、「所有権の呪縛からの解放」をうたい、「無理に住宅を取得せず、賃貸住宅で暮らしていく。そんな柔軟な生き方があってものよい」として、未来の住宅の創造につなげることを示唆しています。

限界マンション「次に来る空き家問題」

本書では、建物の老朽化が進み、同時に居住者の高齢化や空室化が進んで管理が行き届かなくなり、スラム化に至るものを「限界マンション」と定義。立地環境が悪く、建替えや再開発の可能性のない物件で、解体費用も捻出できなければそのまま放置されるケースが大量に発生すると予想しています。
多くの老朽マンションにおいて、建替えは①住民の高齢化②空室化・賃貸化③管理組合の機能不全④区分所有者の合意⑤余裕のない容積率⑥既存不適格物件⑦解体・建替え費用⑧人口・世帯数減少など、いくつもの高いハードルによって可能性が極めて低いとされます。
区分所有権の解消にしても解体費用の捻出ができずに老朽マンションの放置につながるとも考えられます。
こうした「限界マンション」の最終責任はだれがとるというのでしょうか。そもそも共同住宅を分譲するという供給方式に問題があったのではないか?―著者は、いよいよマンションの終末期問題に日本の社会が直面しつつあると言い放ちます。
自分の所有するマンションがスラム化に至るような事態を避けるためには、管理組合を機能させ、必要な修繕を行って資産価値を維持し、中古としても魅力的な物件として市場で流通・再利用されるよう努力していくしかありません。
とはいえ、高齢化、高経年化を迎え、さらに現状の法整備で問題解決の糸口がみつかるでしょうか。今後、限界マンション問題は、超高層マンションへ引き継がれ、問題はさらに深刻化していくと書かれています。

(大規模修繕工事新聞 第74号)2016-02


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