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大規模修繕工事瑕疵保険の内容整理/その4 工事後の「瑕疵・不具合」の保険支払い事例紹介

77-27事故例①

・物件概要
築30年・1棟・200戸
・工事内容
共用雑排水管ライニング(更生)工事
・事故内容
3年前に工事を行った築30年のマンションで、1階住戸内から「異臭がする」と相談が寄せられた。
管理組合と管理会社は部屋に入り床下から感じる臭いを確認。原因は排水管ではないかということで、3年前に工事を行った工事会社に問い合わせたが「きちんと工事したのでありえない、工事ミスが原因ではない」と工事の瑕疵・不具合の疑いを否定した。
管理組合は当時の工事で、業者募集する際、工事会社へ大規模修繕工事瑕疵保険の加入を条件付けていたため、保険法人に調査を依頼。保険法人と調査会社は異臭の発生個所と工事個所に因果関係を認め、一部床材を壊し、内視鏡で管周辺を調べた。
その結果、水漏れが起きており、雑排水の水たまり状態による異臭とされ、水漏れ原因は工事瑕疵であることが判明し、保険金支払い可能と判断。適切な補修範囲を保険法人が決定し、施工した工事会社が補修工事を行い、床材等も原状回復した。
修費関係の総額380万円、補修期間は約3週間だった。
77-28・補修費関係の総額380万円内訳
補修費、2住戸の工事中の仮住まい費、事故調査費
・保険金の支払額
約310万円(工事部分の補修費 ※共用部分補修費、床材部分等原状回復費、仮住まい費、事故調査費等)
・工事会社の自己負担分
約70万円(免責金額10万円含む)
・請負工事金額(保険金支払限度額)
約2,500万円(3,000万円)
・保険料等
約23万円(基本保険料+現場調査料等)

●工事会社には被害者救済の義務あり

以上、保険金支払い事例を紹介しました。
保険金の支払額は約310万円ですが、補修費等として工事会社に保険金が支払われます。
一見「工事会社のための保険制度ではないか」と思いますが、工事で被害を被ったのは管理組合であり、工事会社には瑕疵担保責任を含め、被害者救済の義務があります。ただし、工事の瑕疵・不具合の補修費等は高額になりがちで、工事会社が補修対応を含めた救済を充分にできないケースが多いのです。
そんな内容に保険金支払いをすることで、管理組合を救済する仕組みが瑕疵保険なのです。
保険金支払い限度額は数千万円のため、保険期間中に瑕疵・不具合が発生すれば、再度、限度額まで保険金請求することができるので安心です。
また、原因個所をスムーズに修復できれば、トラブルを引きずることもありません。

●大切なのは想定外トラブルに備えること

大規模修繕工事瑕疵保険を取り扱う保険法人の1社である㈱住宅あんしん保証では、平成28年3月現在、大規模修繕工事瑕疵保険の申込実績が累計1,900棟超になりました。
現在、保険金支払い事例は35件ですが、工事会社や管理組合から雨漏り、水漏れ、その他瑕疵・不具合の相談事例はさらに多く、100件程度の増加傾向にあります。
工事着工前の申込が必要なため、工事後の瑕疵・不具合が発生してしまった後では、遅いといえます。
管理組合にとって大切なのは想定外のトラブル回避につながることです。
自動車の自賠責保険(事故が起きた場合に、運転者が被害者を救済するために強制的に保険加入するもの)と同様に大規模修繕工事においても、今回紹介した事例のように、瑕疵・不具合から管理組合を救済できるよう「工事会社には瑕疵保険加入を入札の条件にする」という意識を持つことが必要なのではないでしょうか。
(大規模修繕工事新聞 第77号)