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ちょっと気になる会計処理 現金事故を防ぐポイント③

 

管理会社では、管理組合財産に対する金銭事故が起きても速やかに対応する内部監査体制制度の強化に努めています。 既存の事故を想定した例と、取り組んでいる再発防止策について紹介します。

 ケース7

フロントが偽装請求書等を用いて着服

 

【経緯】

マンション管理担当課長でもあるフロント 社員は、会計担当社員が承知していない管理組合の銀行口座の通帳・印鑑を預かり、偽装 した請求書や業務指示書を用いて当該口座へ送金し、出金・着服しました。

また、漏水事故等による保険金請求で、保険会社に対して損害保険金本体については、正規の管理組合の銀行口座を指定し入金させ、臨時費用保険金については 別口座を指定して入金させ、そこから出金・着服していました。

【再発防止策】

①管理会社が承知していない銀行口座については、管理組合と協議し、管理組合決算の中に取り組むことを推奨するとともに、それが困難である場合には、当該口座の存在について、 管理会社へ登録していただく。

②重要事項説明書ならびに決算報告書に「従業員は、管理組合が保管している通帳・印鑑・キャッシュカード等を預からない」旨を記載する。

③保険金請求業務を職務分離し、フロント社員が属しない部署において担当する。

④チェック機能を確保する観点から、課長職のフロント兼務を解消する。

 ケース8

管理員が駐輪場使用料を着服

 

【経緯】

管理員が、駐輪場使用料等の契約書を区分所有者から取得後、当該契約書を破棄し、会社に報告しないで使用料を着服しました。

管理員の犯行の裏には、フロント社員が駐車場の管理を管理員任せにしていた怠慢があり、マンション会計部で作成している「駐車場・駐輪場稼働台帳」とは別に、管理員が 「駐車場・駐輪場稼働台帳」を別途作成しており、実際の利用状況の照合を怠っていたことから覚知が遅れました。

 また、管理員は、管理 会社指定または管理組合指定の領収書を使用せず、市販の領収書を使用していました 。

【再発防止策】

①空き駐車場募集を掲示板に掲示する。

② 管理員が市販の領収書を使用できなくするために、現場で「領収書」等を発行する場合には、現金の取り扱いルールおよび管理 会社または管理組合指定の「領収書」を管理組合員に周知する。

③マンション会計部は、駐車場・駐輪場使用料等の口座引き落としの原始証憑(申込書、契約書等)を記録・保管し、それから「駐車場・駐輪場稼働台帳」を作成する 。管理員は「駐車場・駐輪場利用状況表」 を作成し、無断貸出の防止ルールを作った上で、管理組合または管理会社は「駐車場・駐輪場稼働台帳」 と「駐車場・駐輪場利用状況表」を照合して実際の利用状況を確認する。

ケース9

管理員が施設利用料を着服

 

【経緯】

 管理員が駐車場や集会室等の施設利用者から受領した現金を会社に報告しないで着服しました。管理会社指定または管理組合指定の領収書はあるが、連番管理・複写式としていないため、管理員が勝手に使用できるようになっていました。

【再発防止策】

① 管理員が市販の領収書を使用できなくするために、現場で「領収書」等を発行する場合には、現金の取り扱いルールおよび管理会社または管理組合指定の「領収書」を管理組合員に周知する。

② 管理事務所で使用料等の現金を受領する場合、管理員が「領収書」(連番管理・複写式等)を発行し、現金入金明細書に記入する。

③ フロント社員が現金を回収する場合は、現金、領収書(控)、現金入金明細書を照合した上で、回収を記録する。

(大規模修繕工事新聞 第80号)