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リスクに備える「工事完成保証制度」を検証

「工事完成保証制度」とは、工事会社の倒産等による工事中断など、万が一の際に管理組合が受ける被害に対して、工事が完成できるように保証(履行保証)する制度です。工事会社が倒産した場合、すぐに工事現場や工事会社の状況を確認し、引き継ぎする工事会社を紹介・あっせんすることで、速やかに代替履行工事会社に引き継ぎ、確実に、スムーズに工事の継続を約束します。
とはいえ、「工事完成保証制度」と呼ばれるものの、内容を疑問視せざるを得ないものもあります。そこで、マンション大規模修繕工事で工事完成制度を実施している3団体の制度を比較検証してみました。

①金銭保証
全国建物調査診断センター(全建センター)では支払い済みの前払金(着手金、中間金)について第三者機関が調査し、工事の進捗と支払い済みの金額とに差が生じた場合の損害を保証する。
 引き継ぎ業者への支払いが当初の契約金額を超える場合にも保証されるので、工事完成までの追加工事費用も該当。つまり代替履行工事会社が引き継ぐことにより発生する増嵩費用が工事費の30%を上限として保証されることになる。
 B協会は基本的に着手金、追加工事費の保証はなし。仮設工事に関しては、仮設足場、現場事務所等のやりかえのみについて上限100万円まで金銭保証する。
C協同組合は金銭保証なし。
B協会もC協同組合も実質的に金銭保証がないまたは保証額が少ない場合に限定されるなど、それが「工事完成保証制度」と呼ばれるものか疑問が残る。
②役務保証
全建センターとB協会は代替履行工事会社の紹介・あっせんを行う。B協会では会員工事会社に再開する工事を依頼しないと仮設足場保証が使えなくなるペナルティーあり。C協同組合は役務保証として工事の完成を可能としている。しかし、具体的な対策費の蓄積や担保する保険会社等の内容が不安定で、不透明な部分がある。
③保証制度の担保性
 全建センターでは住宅金融支援機構提携金融機関「株式会社ジェイ・モーゲージバンク」が保証。大手損害保険会社がそれを再保証する仕組みをとっており、信頼がおける。
 一方、B協会は仮設保証について上限100万円を協会と住宅瑕疵担保責任保険法人で保証する。C協同組合は実態の確認ができない。
④審査機能
全建センターの工事完成保証制度を利用できる工事会社は登録制で、登録時および毎年行う審査により、登録工事会社の倒産リスクや事業性に信頼度が高い。
他の2団体は会員であれば利用可能。会員工事会社の経営上の信頼性は不透明で、倒産リスクの可能性が見えない。

 制度を見る上で重要な点は「金銭保証」です。全建センターでは前払いなど金銭被害があっても工事の30%を上限に大手損害保険会社の保証を得ているため、金銭面のトラブルがなく工事の継続ができます。
 金銭保証がなく(または少額限定)、工事会社の紹介・あっせんのみでは保証制度として片手落ちといえないこともありません。また、この点を説明せずに工事完成保証として管理組合と契約し、実際に工事会社の倒産・金銭被害にあった場合、どういう責任が発生するのかについても疑問が残ります。
 しっかりとした工事完成保証制度は「金銭保証にあり」といえるかもしれません。契約の際には入札条件の段階から保証制度の内容をしっかり確認する必要があるでしょう。

(大規模修繕工事新聞 第85号)


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