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村の「寄り合い」とマンションのコミュニティ

NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2017年2月5日付第413号「論談」より

民俗学者の宮本常一氏の『忘れられた日本人』の冒頭は、こんな話ではじまる。
氏が対馬へ現地調査に行ったときのこと。ある村である老人から村の古文書を見せてもらった。面白いので「しばらく貸してくれ」と頼んだ。老人は相談してくるといって村の「寄り合い」に出かけた。
ところがなかなか帰って来ない。行ってみると、会場でもその外でも人々が三々五々話し合っている。聞いてみると、村で取り決めを行うときは、みんなの納得のいくまで何日も話し合うのだという。
全員で話し合い、また地域ごとに話し合う。夜となく昼となく話し合う。用があれば帰り、終わればまた来て話し合う。とにかく無理せず、納得のいくまで話し合う。こういう習慣が何百年となく対馬の村々で続いてきたし、全国各地にもあったという。
たしかにこれは昔の村落共同体の、動きの少ないのんびりした時代だからできたことであろう。
しかし、観点を変えてみると、マンション管理組合の集会(総会)も形は違うが、こうした村の「寄り合い」の復活という面があるように思う。
区分所有法では、区分所有者全員の集会(総会)を年一回、必ず開くことを義務付けている。昔の村落共同体では、生活の全体が共同体の中にあった。これに対して、管理組合では住宅の管理に関わることに範囲が限定されており、その点は違う。
だが、そうは言っても、こと住生活、住宅の維持・管理については、一つの共同体を形成していることには違いはない。
法律の立案者たちの考えがどうであったかは推測するしかないが、全員による集会というけっこう手間ひまのかかる方法を採用したのは、全員の納得を追求する「寄り合い」の精神を取り入れているように感じる。
忙しい現代では、村の「寄り合い」のように時間をかけるわけにはいかない面もあるだろう。しかし、われわれとしても、可能な限りその精神を生かして、徹底した話し合いとそれに基づく一致を尊ぶコミュニティの形成と発展、その上に行われる管理組合の運営を目指したいものである。
(NPO日住協論説委員会)

(大規模修繕工事新聞 第87号)


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