「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

全建センター第30回記念セミナー 大規模修繕100組合の教訓 紙上採

 全国建物調査診断センターは3月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第30回記念セミナーを行いました。この中から㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察について」、その一部を掲載します。<構成:編集部>

事例の紹介


◇塗料をしっかり吟味。躯体保護、美観、プラス機能性で材料選定
物件概要/東京都大田区・1983年(昭和58年)竣工・RC造・地上3階・1棟・23戸
工期/2010年3月1日~5月31日
(文)
23戸と小規模なマンションでありますが、工事の内容としては外壁下地補修、外壁塗装、シーリング、鉄部塗装、バルコニー床防水など、十数年に一度行われる一般的な大規模修繕工事です。
ただし環状七号線に近く、ばい煙や雨で外壁が汚れやすい環境にもありました。こうしたことにお悩みのマンションにお住まいの方というのは、結構いらっしゃいますね。
都内ですごく交通量が多いところですと、風向きによって外壁が汚れる、また汚れた雨が落ちやすいことがあります。なんでこんなところがこんなに汚れているの?ということがよくあります。
この物件では理事さんが塗料等に非常に見識がある方で、「何でも塗ればいいんだ」という方ではなくて、自分たちのマンションは外壁が汚れやすいので、汚れにくい材料を使うことによって工事を実施した効果というものを、より長く維持できるようにしたわけです。業者選定と同時に、採用する塗料についても時間をかけて吟味しました。
まずは水溶性塗料または水系塗装仕上げ材を選択。その上で膜厚の条件を厳しくチェック、耐候性テストなどを行っています。
これまで塗料は躯体の保護という観点が大きかったが、今後は「美観」が加わり、さらには「機能性」が求めています。機能性とは、雨が降ると汚れも一緒に洗い流すことなどです。
                                                               ◇
建物の仕上げ材というものは、躯体コンクリートがむき出しのままですと、雨にあたり、風にあたり、中性化が進むこともあり、それを保護するためにタイルや塗装が施されているといえます。
同時に外観に関しては、化粧―美観も重要であります。ただ、塗装や防水の材料の選定如何によっては寿命が変わってくることもあるんです。
概ね12年ごとが大規模修繕工事の時期といわれています。しかし、12年はあくまで目安でしかありません。このサイクルをできる限り延ばすことがこれからはますます重要とされています。
環境の保護や修繕積立金の有効な利用などから考えて、大規模修繕工事においては材料の選定というものをよく吟味し、費用対効果の高い、ロングスパン化ができる材料を用いることによって、管理組合全体の予算を有効的に使うことができると考えられます。

(大規模修繕工事新聞91号)

外階段、外壁塗装前と塗装後

玄関ドア施工前と施工