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アスベスト含有の外壁改修 情報不足にさらされる住民

アスベスト含有の外壁改修 情報不足にさらされる住民

NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2018年10月6日付第433号「論談」より


 昨年7月、環境省、厚生労 働省が、マンション外壁などを 改修する大規模修繕工事など について、厳格なアスベスト飛 散防止策を全国の自治体に出 した。
 県、市なども今年2月ごろか ら工事業者、設計事務所など を対象として説明会を繰り返し 開催している。
 大規模修繕工事を計画、外壁改修を実施する管理組合にとって は、なぜ今年から急にという思いが募る。
 施工業者も初体験だから、従業員を労働基準局の開催するアス ベスト対応方法の研修会に派遣、一定の資格を取得させるなど、 大わらわだ。
 横浜市のA団地では、竣工後3回目の改修予定の外壁、階段室 の天井(上裏)から採取した検体を検査機関に分析を依頼した。
 その結果、7棟のうち2棟の外壁の仕上げ塗材、下地調整剤か ら0.1%から0.5%のアスベストが検出。階段の上裏からは、7棟全 部からアスベストが検出された。
 管理組合は、この結果を受け止め、工程を一部変更するが、逃 げずにきちんと対応する方針を決めた。アスベストの処理費用は全 体で850万円と見積もられた。
 想定外の費用だが、予備費等で対応する予定という。
 工期も1カ月延長になる。一方、横浜市では調査費用等の補助 金の制度を新設したが、マンションについては対象外という。
 住民にとっては、工事に伴い、外壁や上裏に含まれる微量のアス ベストが飛散するのが一番の懸念だ。住みながらの工事だけに不 安が募る。
 アスベストは、公共施設、住宅、マンションなど建築物に断熱材、 吹き付け材、保温材として使用されてきた。  しかし、その健康被害から1970年代から製造、使用が段階的に規制されはじめ、12年前の2006年には重量比で0.1%を超えて含ま れるすべての製品の製造、使用が禁止された。
 しかし、それ以前に使用された塗材や下地調整材などには含まれ ているため、外壁の釣り替えに伴い、足場仮設の設置で、外壁に 足場つなぎ穴を開ける際などに、アスベストの飛散が懸念される。
 一連のアスベスト規制を国、自治体が打ち出したのは評価される が、管理組合、住民を対象とした説明の機会を設けないのはなぜ なのか。
 にわか勉強の工事業者の説明に任されているのが現状だ。正し く恐れて工事に臨もうとしている、管理組合、住民が情報面では置 き去りにされている。
 これから築30年、40年のマンションの外壁改修が増える。費用 面でも、国、自治体が補助制度を設けるなど本格的な対策が求め られる。

(NPO日住協論説委員会)

(大規模修繕工事新聞107号)