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 File Data. 135 東京・中野区/沼袋スカイハイツ管理組合

4回目の大規模修繕工事とともに
「緊急輸送道路耐震化事業」を活用

 1DKや2DKをメインに単身者やDINKSのほか、3DKのファミリー向けまで多様な区分所有者に対応したマンション。1972年竣工の高経年で、賃貸住戸も多く、管理組合運営が難しい。その中で、4回目の大規模修繕工事の計画が持ち上がった。
 そこで懸案だった耐震性能の問題が修繕委員会の議題となる。これまで3回の大規模修繕工事は管理会社任せであったが、数年前の管理会社変更とともに、建築関係に勤める住民を中心に修繕委員会を立ち上げたことから、4回目は管理組合主導で工事を進めることになった。
 懸案事項の耐震補強については、旧耐震建物であり、耐震診断で性能不足だという結果が出ている。しかし、区分所有者の合意はどうやって得るのか―その前に躊躇し、取り組みは先延ばしになっていた。
 ただ、マンションは新青梅街道沿いに立地する。東京都では大きな地震等の災害が起こった際、その被害を最小化するため緊急物資輸送の大動脈となる幹線道路沿道
の耐震化を進めている(緊急輸送道路沿道建築物の耐震化)。
 この東京都の事業から助成金を得ることができ、また特定住戸に影響を及ぼす鉄骨ブレースを用いない工法の採用のめどがたったことなどから、合意形成が大きく前進したという。
 工法は、耐震補強の対象となる建物南側のバルコニースラブを解体して、躯体に柱・梁の鉄筋を組み立て、型枠を作りコンクリートを打設して新たなバルコニーを再生するというもの。既存のバルコニースラブを解体する際の大きな騒音、アンカーを打ち込むドリルの音、バルコニーがなくなれば窓さえ開けられない状態であったが、住民は耐えて工事計画の予定通り3月末の竣工を迎えた。
 通常の大規模修繕工事ではバルコニーの使用は一定期間、または住戸の系統ごと順番に使えるが、今回はバルコニーがないのでほぼ9カ月間、洗濯物は部屋干しのみ。エアコンは室外機を天吊りにして使用可能にした。
 工事は耐震補強を中心に、外壁塗装、鉄部塗装、防水工事のほか、手すり交換や各種外構工事、駐車場舗装工事など、4回目の大規模修繕工事も同時進行で完工した。
 耐震補強工事は費用や特定住戸に影響が出ることなどから、合意形成が得られにくい。しかし、過去の大震災の経験からも1981年に改正された建築基準法の新耐震基準に合わせることが「人命を守る」命題といえそうだ。

(大規模修繕工事新聞116号)

施工前の南向きバルコニー側の様子

施工前の南向きバルコニー側の様子

仕上がりのデザイン図(枠線が補強した部分)

耐震補強施工中の様子

施工後の南向きバルコニー側

施工後の南向きバルコニー側

バルコニースラブの解体作業。騒音低減の工法を採用するが、住民の理解も必要

バルコニースラブ撤去後の状態

柱、梁の配筋作業の様子

スラブの上からコンクリートを流し込む。空洞ができないよう、しっかりと充填させる

北側外壁にも一部耐震補強を実施

北側外壁にも一部耐震補強を実施

1階車路の柱に袖壁を設置

(南北とも長さ2m)

各階廊下等にスリット設置(35カ所)

バルコニー側の1階専用庭の壁を更新。

その前の路面を水はけの良い

改質アスファルト舗装に改修

鉄骨階段など、鉄部腐食部には㈱BAN-ZI開発の「サビキラー」製品を採用

マンションの顔となるエントランスは照明を温白色のダウンライトに変更し、一新した

工事データ
○工事名/沼袋スカイハイツ耐震補強工事・大規模修繕工事
○建物概要/ 1972(昭和47)年竣工・RC造・地上7階建て・1棟・42戸
○発注者/沼袋スカイハイツ管理組合
○設計監理者・施工者/ヤシマ工業㈱
○主な大規模修繕工事内容
1.下地補修/建物のひび割れや塗膜の浮きなど
2.内外壁仕上げ/塗装や洗浄など
3.鉄部塗装/鉄部の錆を除去しながら塗装
4.屋上他防水/最上階・低層階の屋上や塔屋を防水
5. 外部床改修/バルコニーのウレタン防水、廊下長尺シートの張り替え
6.クリーニング/各種クリーニング
7. 各種電気/共用分電盤の更新、LED照明、デイライト設置(エントランス天井改修)
8. 外構/ゴミ庫、周辺フェンス、東西扉交換、駐輪場奥フェンスなど
9. その他/4K対応設備更新、全戸バルコニー手すり更新、専用庭壁更新、駐車場アスファルト舗装更新、屋上換気塔更新、エレベーター扉ダイノックシート貼り、らせん階段の脆弱部補強など
○工期/ 2019年6月~ 2020年3月

耐震補強工事の流れ
1. 剥離剤塗布
 耐震補強を行う部位の塗装を除去するために剥離剤を塗布。石綿含有建材の飛散防止の役割もあり。自治体(中野区)の指示に従った作業を行う。
2. 塗膜・補修材除去
 剥離剤の後、手作業によって塗膜を除去する。
3. 土間ハツリ
 補強柱の足元には地中梁という補強材が必要であるため、1階専用庭の土間コンクリートを除去する。
4. 基礎掘削工事
 地中梁の設置のために掘削する。掘削した底にはコンクリートを打設する。
5. 基礎コンクリート打設
 掘削し、鉄筋工事、型枠工事を行った後、コンクリートを打設する。
6.転圧
 基礎コンクリートが固まった後、しっかりと転圧をかけて沈下がないようにする。
7.バルコニースラブ解体
 補強個所の部屋のバルコニーを解体する。
8.アンカー打設
 耐震補強個所の新しいコンクリートと既存の建物の緊結するため、アンカーを打設する。
9.柱の配筋作業
 アンカー打設後、柱の鉄筋を配筋する。
10.梁の配筋作業
 柱筋に続いて梁の配筋を行う。
11.型枠作業
 バルコニーに型枠という木の枠で、コンクリートを流し込む入れ物を作る。
12・配筋完了
 型枠の上にスラブ用の配筋を行う。
13.支保工設置
 コンクリートは固まるまで時間がかかるため、基準で決められた期間中、支保工で形状が崩れないよう支える。
14.ミキサー車・ポンプ車
 コンクリートはミキサー車で運び、ポンプ車で打設個所まで圧送する。
15.コンクリート打設
 スラブの上からコンクリートを流し込む。
16.支保工・型枠解体
 コンクリートが固まった後、型枠を撤去する。この型枠は上階でまた使用する。
17.上階への作業へ
 1フロアの作業を上階で繰り返す。
18.塗装・防水作業
 補強が終わると、塗装・防水作業に着手する。
19.スリット設置
 バルコニー側とは別に、廊下側(一部外壁含む)にスリットと呼ばれる「切れ目」を入れる。

施工者:ヤシマ工業株式会社
■本社
 〒165−0026
 東京都中野区新井2−10−11
 ☎03−6365−1818
代表者:小里洋行 創業:1804年(文化元年)
資本金:1億円
//www.yashima-re.co.jp

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※記事は記者が作成します。取材時には住民説明会資料、施工写真データなどをご用意ください。
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