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専有部分、共用部分の管理不全を防ぐための新制度創設

区分所有法制研究会が令和4年9月にまとめた研究報告書
「第2 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」から、「2 区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」を紹介します。

⑴所有者不明の専有部分の管理制度
<所有者不明専有部分管理人>
 区分所有者が所在不明となっている専有部分については、区分所有者自身による適切な管理を期待することが困難であり、管理不全状態となって悪影響を及ぼすおそれがある。
 そこで、改正民法における所有者不明建物管理制度を参考に、
所在等不明区分所有者の有する専有部分の管理に特化した新たな「所有者不明専有部分管理制度」の創設について検討する必要がある。
 また、所在等不明区分所有者に代わって専有部分の所有権(区分所有権)を管理する所有者不明専有部分管理人にも集会決議における議決権行使の権限を与えるかどうか、その課題などについて検討を続ける。

⑵管理不全の専有部分の管理制度
<管理不全専有部分管理人>
 所有者による専有部分の管理が不適当であることによって、他人の権利や法律上保護される利益が侵害されるおそれがある場合、現行法では、他の区分所有者も近隣住民も柔軟で継続的な管理をすることはできない。
 そこで、改正民法における管理不全建物管理制度を参考に、管理不全専有部分管理人にその専有部分の管理をさせる新たな財産管理制度「管理不全専有部分管理制度」を創設する方向で、検討すべきである。
 ただし、管理不全専有部分管理制度においては、区分所有者の所在が判明しており、区分所有者自身が集会の決議で議決権を行使することが基本的に可能で、管理不全専有部分管理人に議決権行使を認めることは難しいと思われる。

⑶管理不全の共用部分の管理制度
<管理不全共用部分管理人>
 共有者(区分所有者全員)による共用部分の管理が不適当であることによって、他人の権利や法律上保護される利益が侵害されるおそれがある場合において、管理不全共用部分管理人に共用部分の管理をさせる新たな「管理不全共用部分管理制度」を創設することについて、引き続き検討する。
 外壁が剥落するおそれがあるケース、廊下やテラスに危険物や大量の悪臭を放つごみが放置されているケースなど、共用部分の管理が不適当であることによって、近隣住民の権利・利益が侵害されるおそれがある事態が生ずることがある。
 ただし、管理者・理事が適切に機能していれば共用部分が管理不全状態になることはないのであるから、この制度が利用されるのは、管理者・理事が選任されていないか、選任されていても機能していない場面であると想定される。

⑷管理組合等による区分所有権の取得
 管理組合が区分所有権を取得するためのルールについて引き続き検討する。
 区分所有者の所在が不明になり、管理費が滞納され、専有部分が適切に管理されなくなったケースにおいて、現行法では、先取特権の実行などにより、区分所有権を移転させ、新たな区分所有者の下で専有部分の管理を図ることが考えられる。
 しかし、売却先が見つからない場合には、競売手続は取り消され、さらに管理に要する費用がかさんでいってしまう問題が所在する。
 そこで、管理組合が区分所有権を取得して管理を継続することが考えられるが、区分所有権の取得には一般に多額の費用を要し、また、専有部分の管理にも継続的に費用がかかるため、区分所有権を取得することは区分所有者にとって重大な決定である。
 また、権利能力なき社団(管理組合)が不動産(専有部分)を取得した場合、区分所有者全員に総有されることになり、登記名義人を管理者または区分所有者全員としなければならず、管理者または区分所有者が交代するごとに所有権の移転の登記を行われなければならない。
 さらには取得における決議要件、取得後の議決権の行使、管理費等の支出など実務的な課題もあることから、引き続き検討すべきであるとしている。

大規模修繕工事新聞 2022-12-156号

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