一一般社団法人全国建物調査診断センターが主催する管理組合オンラインセミナー。今回は『取り残された排水通気管の改修ポイント』の3回目です。今号では、排水通気管材の種類、排水通気管回りの防水のおさまり、排水通気管の改修事例について掲載します。詳しくはVimeoおよびYouTubeによる第69回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。
排水通気管材の種類
排水通気管を構成している材質は、40年前くらいのマンションだと配管用炭素鋼鋼管(SGP白ガス管)が圧倒的に使われていました。燃えない、安いというのが一番使われていた理由です。期待耐用年数はねじ接合で25年。1989年前後(築35年)からそのまま使われているマンションでは注意が必要ですよ、ということになります。
最近では、排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP、DVA)が使われるようになりました。これは内側にビニールを被覆している鉄の管です。
あとは、耐火二層管(VP)で、これは内側の硬質塩化ビニル管をセメントモルタル管で覆う二層構造の配管です。通称トミジ管といいますけど、通気だけでなく、排水立管自体もこれでやっているケースが多いです。
排水通気管回りのおさまり
次に排水通気管の防水の収まりについてお話します。
屋上でキノコみたいな形のものが突き出ているのが排水通気管です。屋上の防水層を貫通してできています。
今、問題になっているのが、この排水通気管の更新を排水管改修となぜ一緒にやらないのか?ということです。
排水通気管の更新は、どうしても屋上の防水、最上階のお部屋にからんでいるものなので、非常にやりにくいというのが原因です。
排水管改修をやるときに全部一緒にやるのがいいと考えがちですが、屋上防水をやるときには、「まだ排水は先だよね」となり、取り残されることになるのです。
漏水事故はタイミング的に、2回目の大規模修繕と3回目の大規模修繕の間くらいに起きます。だけど、そのタイミングでは、まだ排水管は大丈夫でしょうということで、取り残されてしまう。
また、大規模修繕をやった後だと、屋上防水の保証期間などとの兼ね合いがあって、なかなか手が出しにくい
ということもあります。
排水管をやりましょうという時期になっても、通気管に目立った劣化がみられなければ、既設管に接続して終わり。屋上に上がってくる部分は、保証の問題、防水の問題があるから、設備の業者は手をつけない。
外壁に足場を立てない限り施工できないといった場合では、大規模修繕をやる業者は排水通気管がどうなっていて、どんな事故が起きるかなんて誰も知りません。
設備の業者も大規模修繕の業者もどちらも手をつけないのです。完全に取り残されていますね。事故が起きるまでは忘れている状態になっている。そこが問題です。
排水通気管の改修事例
今度は実際どうやって改修するのかというお話です。
大規模修繕の業者はベランダに入ることは、慣れています。足場からベランダに入ってエアコンの室外機を動かして施工するのは当たり前にやっています。
だけど、お客様のお部屋の中に入ってお部屋の天井、トイレの壁なりを壊して作業するという経験がありません。
一方、設備業者はお部屋内の作業の経験はあるけれど、屋上防水をどうすればよいのかという経験がない。非常に難しいところなんです。
また、全戸入室ならわかるけど、最上階だけとなると「なんでうちだけ?」という反応が非常に多い。一つでも漏水事故がないと、入室は難しく、管理組合内のコンセンサスがないと、工事業者だけでは限界が出てくるところです。
◇
改修工法では、そのひとつとして、ライニング工法があります。
これは屋上の防水を傷めずに行うやり方で、エポキシ樹脂を含侵させたポリエステル芯材を挿入することで、要は貫通部の配管の中に新しく配管を作ってしまおうという工法です。
もうひとつは更新です。古い配管を撤去して、新しい配管に取り替える工事です。
写真の事例は、防水層を全部一回剥がした工事です。
屋上から下の配管は、炭素鋼鋼管を撤去し、新しく樹脂管(VP)を通しました。
大規模修繕工事をやっている途中で、通気管の状態がひどいというのが発見されて、緊急的に行った工事なので、屋上防水もすべて改修を行っています。
このため、屋上に突き抜けている部分も含めて、新しい配管に更新となりました。
このマンションでは、通気管の金物がすでにメーカーのカタログにも載っておらず、既設管を撤去した上で防水をかけないと、マンションが持たなくなっていました。
- 大規模修繕工事新聞 177号 2024-09