東京都をはじめ各自治体では現在、衛生上の問題等を解消するため、貯水槽水道方式から直結給水方式の導入を勧めています。
直結給水方式は、①水道本管からの直接給水のため、水が新鮮、②貯水槽の維持管理費の節約ができる、③貯水槽撤去後の設置スペースの有効利用ができる等のメリットが生じます。
一方、災害時の水の確保を理由に、貯水槽水道方式を継続する管理組合もあります。
いずれにしても管理組合ごとの考え方で選択することですが、ここではまず、マンション給水の基本情報を知っておこうと思います。
<参考:東京都水道局ホームページなど>
●貯水槽水道方式
水道本管から分岐して引き込んだ水を受水槽でいったん貯水し、揚水ポンプで屋上の高置水槽へ引き上げ、そこから重力(自然流下)によって各階・各戸に給水する方式
水道本管から分岐して引き込んだ水を、増圧給水ポン
プを経て直接各階・各戸に給水する方式
増圧直結給水方式する場合、高層マンションには増圧ポンプを多段的に直列に設置したり、大規模な団地には並列に設置する。
貯水槽水道方式で、受水槽の有効容量はマンション全体の1日の使用水量の2分の1程度、高置水槽の有効容量はマンション全体の1日の使用水量の10分の1程度で設定されています。
なお、災害時の給水管の破損で水が消失することを防止するため、水槽の給水口端に緊急遮断弁を設け、受水槽には直接的に水を採取できる水栓(弁)を設けることが有効です。
●増圧直結給水方式(標準型)
水道本管から分岐して引き込んだ水を、増圧給水ポンプを経て直接各階・各戸に給水する方式
吸排気弁は空気を吸い込むバルブ
です。断水などで立管内の気圧が外の気圧に比べて低くなる(負圧)と、外気と同じ気圧になろうとします。このため、特に増圧直結給水方式を採用した場合、給水立管の頂部に吸排気弁を設置し、負圧による逆流を防止します。
●増圧直結給水方式(直列多段型)
●増圧直結給水方式(並列型)
増圧直結給水方式する場合、高層マンションには増圧ポンプを多段的に直列に設置したり、大規模な団地には並列に設置する。
東京都水道局の生活用水実態調査によると、家庭で1人が1日に使う水の量は、平均221リットル(令和3年度)程度だそうです。
公益社団法人空気調和・衛生工学会『空気調和・衛生工学便覧』によると、「集合住宅」における1人当たりの1日の使用水量は200 ~ 350リットル(1日平均10時間)と計算されています。
ちなみに飲料水として最適なpH値(水素イオン濃度)は、pH 7~8(中性~弱アルカリ性)です。
●用途別使用量の目安マンションでは、住戸内の給水管における給水圧力の上限を、一般的に300kPa ~ 400kPaとしています。つまり、増圧直結給水方式を採用する場合、増圧ポンプの運転台数や回転数を制御して給水圧力を安定させます。また使用個所ごとの必要な最低給水圧力は下記のとおりです。
※ 給水管内の流速は、秒速1.5 ~ 2.0m程度で一定にすることで、ウォーターハンマー現象やエロ―ジョン現象を防止します。
給水主管の管径は、使用ピーク時の使用水量によって決められます。ちなみに排水管の流速は、秒速0.6 ~ 1.5m程度。
注意!パイプスペース内の水道メーターは水道局、電気メーターは電力会社、ガスメーターはガス会社の所有物です。
法律によって定められた期限で定期的な交換が必要になりますが、交換義務は所有者にあり、各戸の区分所有者、住民にはありませんので、こうした詐欺には注意が必要です。
大規模修繕工事新聞 178号 24-10