

『新築がお好きですか? 日本における住宅と政治』
住宅と言えば、「買うか、借りるか」という選択が話題になる。しかし、金利の低下や将来の土地の値上がりが特定の個人に影響をもたらすわけではなく、持家と賃貸のどちらかを有利にするものでもない。
しかし、日本では、持家社会という「制度」が形成され、新築住宅を購入するという選択が、購入者の好みというよりも、様々な法律や慣習などによって相互補完的に支えられてきた。政府は賃貸住宅や中古住宅での「市場の失敗」に積極介入せず、経済対策の一環として住宅建設を重視し、新築建設を奨励してきた。
日本は現在も、人口減少が進む中で多くの新築住宅が供給されている。将来的に「負の資産」となった場合の処理が極めて困難になるにもかかわらず。
本書では、中古住宅市場の育成や賃貸住宅の利用ができれば、所有権を強調しない新たな「制度」が現れるかもしれないとする。過剰な供給のために「負の資産」となった住宅の対応を政府に求めるのは難しく、政府は住宅に関連するガバナンスの向上を支援すべきで、マンションでは管理組合のあり方というガバナンスの仕組みについて実証的な検証が不可欠だとも述べている。
大規模修繕工事新聞179月号(24-11)
『新築がお好きですか? 日本における住宅と政治』
著者/砂原庸介
発行/ミネルヴァ書房
サイズ/四六判上製・266ページ
定価/ 3,080円(税込)
2018年7月20日発売ISBN 978-4-6230-8366-4