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死ぬまで、このマンションに住み続ける人生計画 本気で「終の棲家作戦」を立てましょう! マンション価値の向上<サッシ・玄関ドア編>

国土交通省が発表した平成5年度マンション総合調査によると、60.4%の区分所有者が「永住するつもりである」と回答しています。この永住志向は、年齢が上がれば上がるほど、「終の棲家としたい」という方が多くなる傾向にあります。本気で「終の棲家」を目指すなら、マンション価値を向上させるとともに、快適性を求めることが重要です。そこで今回はサッシ・玄関ドアにスポットを当て、全建センター玄関ドア・サッシ改修相談室のセミナーをまとめました。詳しくはVimeoによる第72回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。


サッシ改修はなぜ終の棲家の条件なの?
佐藤成幸・筆頭理事 マンションは「家」です、というお話を何度もさせていただいております。「家」となると、「快適に暮らす」という要素が実は欠かせません。
 快適に暮らすための設備と考えると、バルコニーのサッシ・建具や玄関扉については、諸物価高騰の折、省エネ、コスト削減、節約の要となる「断熱」という言葉からしても、重要性が増しています。
 本気の終の棲家という観点からも、避けて通ることができないバルコニーのサッシ・建具の問題。本日は、玄関ドア・サッシ改修相談室室長である箕輪理事に様々な事例を含めて紹介してもらいます。
箕輪貴弘・理事 やはり大規模修繕や給排水工事に関しては、管理組合のほうでも予算をきちんととって工事を実施いていますが、サッシ改修や玄関ドアなどの開口部の改修をしている組合は非常に少ない。予算の確保ができていないせいか、理事会でも検討課題にさえ上がっていないのが実情です。


佐藤筆頭理事 国交省・マンション総合調査の「直近の大規模な計画修繕工事の内容(重複回答)」では、「外壁塗装等」87.1%、ついで「屋根防水」75.0%、「床防水」61.6%で、外壁、防水関係の修繕はほとんどのみなさんが着実に実施されていることになっています。
 一方、本日のテーマである「建具・金物等」は35.6%。さらに「これまでに実施した省エネ改修工事の内容(重複回答)」で、「サッシの省エネ化」と回答した管理組合は8.6%しかないんです。
 外壁や防水の工事で国や自治体の補助金制度はありません。サッシには補助金がつくのにやらない。外壁の工事は補助金もつかないのに9割近い管理組合がやっている。
 箕輪理事の指摘でもありますが、いまひとつメジャーな工事になってないのですね。
 予算のあるなしの問題ではないですよ。金があるとかないとかの話とは全然違って、認識の違いです。
 皆さんのマンションを本当の終の棲家にするためには、積立金やお金に関しての意識を変えるということが大事なんです。
 当センターでは、2015年から大規模修繕工事の周期は18年でいいという提言と情報の発信をしてきました。乱暴な言い方ですが、これまで12年周期だった大規模修繕工事を1回飛ばしてでも、快適性を求めるためにお金を使ってもいいんじゃないかという話です。

箕輪理事 JIS規格で、耐風圧性、水密性、気密性、断熱性、
遮音性において、等級の良いものを改修工事で採用しています。
 昨今の台風は災害級の強風で、雨量も非常に増えていて、どんどん耐風圧性能、水密性能のいい頑丈な製品が続々と出てきています。
 断熱性能も非常に高く、樹脂コーティング等々の部分も含めて、製品も随分変わっている。築20年超えるものとでは、雲泥の差があるようです。
 アルミ樹脂複合窓は、外側がアルミ、内側が樹脂の併用で、結露が非常に出づらいという製品が出ています。箕輪理事 バルコニー側の窓で今、非常に開けづらい、重たいそういった現象が起きていることも多いと思います。
 複合窓はガラスが2枚構造になるため、製品自体少し重たくなるんですけども、握力がない力が少し弱ってきたご高齢の方でも開け閉めがしやすいハンドルに変わってきています。
 また左右どちらの障子とも、たて障子に手がかり形状がついていて、開け閉めが非常にスムーズになるという部品になっております。
佐藤筆頭理事 古いサッシですと溝があるだけなので、手をかけながら開ける時、うっかりすると爪を傷つけることがありますが、ご高齢の方にも優しい開け閉めができるというものになってるんですね。
箕輪理事 バルコニー側は洗濯物を干したり、そういったことで毎日の出入りが欠かせませんが、操作性の向上をすることで、日頃の生活のしやすさが大きく改善されるのではないかと思います。
佐藤筆頭理事 クレセント(鍵の部分)も変わっているんですか?
箕輪理事 カーテンが挟まってしっかり閉まりきっていない状態ですと、鍵が回りきらない構造になっています。何か異物があって閉まりきっていないとき、クレセント自体が回らないので、鍵のかけ忘れ防止につながるという仕組みです。
 つまり、今の新しいサッシには、防犯上の安全につながるような設備が標準で整備されているわけです。
佐藤筆頭理事 実際に工事についてお聞かせください。
箕輪理事 カバー工法は基本的に在宅1日でできます。実際その一つのお部屋に窓が4枚5枚ついている場合も1日で工事が完了するので、お住まいの方には負担の少ない工法です。
 朝古かった窓が、夕方には新しいものになっています。結露による健康被害、無断熱窓が引き起こす冬の寒さと夏の暑さなど、何十年我慢してきた不具合が1日で解消されるのです。
玄関ドア改修のメリットは?
佐藤筆頭理事 玄関ドアについても今、バリエーションもすごく増えていますね。外観のデザインはもちろん、2重ロックなどの防犯性、プッシュプルハンドルなどの操作性、さらに地震への対応など。
箕輪理事 既存の玄関ドアだと、地震で枠がゆがむと扉が開かなくなります。いわゆる「閉じ込め」です。対震枠を採用することで、枠と扉が競ってしまっても、扉が開けられて閉められるという性能を持った玄関ドアが出てきています。
 建物自体は無事でも、部屋から出られない、屋外へ避難ができないといったケースがありますが、対震枠にすると、本当に何の力もかけずに普通に開いてしまいます。
佐藤筆頭理事 私は阪神・淡路大震災の際に、マンション災害の復旧・復興に携わったんですけれども、玄関ドアの枠が歪んで開かなくなったという問題は、実際の教訓として出てきました。防災備品の中にバールを常備すべし、と言われるようになったのですが、現在は玄関ドア自身が製品化されているということなわけですね。
 また昨今は闇バイトによる連続強盗被害など、高齢者をターゲットに玄関ドアや窓サッシを壊して住宅に侵入した事件が多発するなど、マンションも他人事ではない、何か非常に物騒な時代になりました。
箕輪理事 こちらの玄関ドアですが、鍵の部分です。鍵を回した時にポコーンと中から、デッドボルトというカンヌキが出てきますが、よく見るとカンヌキの先に折れ曲がったカマ状の金属が出てきます。こじあけようとしてもこのカマ状の金属が引っ掛かり、簡単にこじ開けられない構造になっています。
佐藤筆頭理事 ただし、こうしたカンヌキがあるから大丈夫じゃなくて、自己防衛は欠かせません。皆様方の家の防犯に寄与する、快適な生活に寄与する、このような感じになってもらいたいということなんですね。
 さて、こうしたいい製品が出てきていますが、実際の工事はどのような作業が必要でしょうか。
箕輪理事 玄関ドアの枠に新しい扉の枠をかぶせていくのがカバー工法です。
 作業の時間は、サッシ同様1日で終わるんですが、玄関ドアに関しては、半日程度で工事を完了することが可能になっていますね。
佐藤筆頭理事 さきほどサッシは朝古いものが、夕方には新しくなると言いましたが、玄関ドアの場合は昼古いものが夕方には新しくなっているということですね。

窓サッシ・玄関ドア改修で違う生活が待っている
箕輪理事 気温の変化をお部屋の中で生むことによって、この時期よく聞く言葉になると思うんですがヒートショック、暖かい部屋から寒い部屋に移動することで、どうしても体調の変化が起きて倒れてしまったり、そうしたことが発生しやすくなります。
 開口部の改修を行うことで、部屋の温度を均一に保つ効果が得られます。体の健康のためにも、ぜひ採用していただきたいと思います。
佐藤筆頭理事 健康で長くマンションに住まうためには、この断熱ということがいかに欠かせない必要な事項であるか。また、高齢者の方々を狙った犯罪というのが増えてきました。さらにマンション住まいだから、台風や風水害、こうしたものに安心だという時代でもなくなってきています。
 皆様がマンションを「終の棲家」として向こう10年20年30年暮らしていく方向で、残念ながら社会はもっと厳しくなるんだろうという見立てが正しかろうと思います。
 そうした中で、建物に使うお金は、何回も繰り替える外壁、床の工事が優先ですか?
 みなさんが月々、管理組合に払っている修繕積立金、決して安くないと思います。健康で長生きしている間に恩恵を受けられるようになっていますか?
 窓サッシや玄関ドアを変えるだけで、全然違う生活が待っています。変えたマンションの住民は必ず、「もっと早くやっとけばよかった」と言うんです。変えて後悔をしたマンションは
一件もありません。
 終の棲家にするために、快適なマンションにするために、建物修繕の考え方、意識を変えるということをお伝えさせていただいて終わりたいと思います。

第72回管理組合オンラインセミナーの動画の閲覧はこちら>>>VimeoとYouTubeで配信しています。
//zenken-center.com/72sem1222

大規模修繕工事新聞 181号2025-1

カバー工法は基本的に在宅1日でできます

窓サッシ・玄関ドア改修で違う生活が待っている