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改修工事に100%はない!精度の限界 Part2

改修工事に100%はない!精度の限界 Part2

大規模修繕工事に関する知識と情報を得るために…

一般社団法人 マンションリフォーム技術協会

大規模修繕工事は住まいながら作業を行うため、必ずしも100%完璧な工事は不可能と言っても過言ではない。騒音、臭気、粉じん、毒性の高い材料の使用等に限界があり、さらに短工期で仕上げまでを求められることがその理由だ。一般社団法人 マンションリフォーム技術協会が発行する『精度の限界』をもとにpart.2をまとめた。

事例⑥ 廊下・ベランダ床の水はけ勾配の限界

1) 廊下・ベランダの仕上げ目的

傾斜角1度:液体の動きなし
傾斜角1度:液体の動きなし

もともとの下地コンクリート面に十分な水勾配がとれていない場合、ウレタン塗膜防水等を施工しコンクリート表面を覆うと、防水が水をはじいて、水たまりが生じやすくなる。
この水たまりをなくすためには事前に水勾配の処置が必要となるが、修繕で勾配をつけるにも限界がある。床ウレタン塗膜の表面の水は乾燥しやすいので、日光が当たればなくなる傾向があるため、仕上げ材は躯体への水の染み込みに対する保護を優先に考えていきたい。

2)廊下・ベランダの勾配

廊下・ベランダの床勾配は、幅1.5mで15㎜程度が設計図で多く描かれている。すなわち1 / 100勾配程度が標準といわれている。
この床勾配に対してたまり水がどれだけスムーズに流れるか、仕上げ材に防滑性ビニル床シートを用いて実験を行った。

傾斜角2度:液体はわずかに動く程度
傾斜角2度:液体はわずかに動く程度

この結果から表面張力を考慮した場合、完全に水はけが良好な傾斜角は3度以上が必要と思われる。しかし、この傾斜角度は集合住宅ではほとんど採用されていない。
大規模修繕工事において第一に優先されるのは、コンクリート構造体への雨水浸入の防止であり、防水材を施工したあとのわずかな水たまりはある程度やむを得ないといえる。

傾斜角3 ~ 4度:液体は下に向かうが途中で止まることもある
傾斜角3 ~ 4度:液体は下に向かうが途中で止まることもある

事例⑦ シール上の塗材ひび割れ剥がれ防止の限界

シール上の塗材のひび割れの例
シール上の塗材のひび割れの例

シール上の塗材ひび割れ
シーリング材の機能は水密・気密・追従性。そのため、目地シールの伸縮に対してシール上に施された塗材にひび割れが生じるのは止むを得ない。
塗材がシーリング材の弾性率・伸縮率を超えた場合、割れ・剥離を起こす可能性は十分にあるといえる。

 

事例⑧ 鉄部塗装の剥離・防錆処理の限界

扉と枠が重なる個所には刷毛が入らない
扉と枠が重なる個所には刷毛が入らない

1)改修塗材の剥離
鉄部改修での塗材は近年、ウレタン樹脂系塗材が多く、新築時に使われている塗材よりもグレードが高くなっている。ただしグレードが高い材料でも、大規模修繕工事後数カ月で剥離したというクレームが起こるケースがある。
修繕の際はコスト面から旧塗材の全面剥離を行わず、重ね塗りの部分も多い。この影響で下に隠ぺいされた旧塗材が侵され・引っ張られ・剥がれることがまれに起こる。
塗り替え塗材の剥離はあってならないが、旧塗材の劣化度の判定にも限界があり、旧塗材から剥がれが生じるリスクもある。

扉と枠の間が乾燥しづらい個所で塗装に厚みを取ると、扉が開閉しにくくなるという問題が出てくる
扉と枠の間が乾燥しづらい個所で塗装に厚みを取ると、扉が開閉しにくくなるという問題が出てく
鉄骨階段と躯体の隙間が少ないと鉄部の下地処理ができない
鉄骨階段と躯体の隙間が少ないと鉄部の下地処理ができない

 

2)改修塗材からの錆汁

鉄部塗装後数カ月で錆が発生したというケース。
修繕時には錆びた部分の下地処理のためにペーパー掛けやサンダー掛けなど工具を使いながら処理を行い、塗装を行う。
この場合、躯体と鉄部との隙間がなくて手が入らない個所もあり、錆の上から錆転換材で既存の錆を封じ込めるなどの工夫をすることがある。また完璧な塗材の厚みを確保すると扉の開閉ができなくなることもある。

 

事例⑨ その他塗装仕上げの限界

1)下地補修の平滑性
新築時のコンクリート打設における壁面段差修正は、塗装前に段差際を樹脂モルタル等で緩和させているケースがほとんど。この部分の改修は再塗装仕上げ後も段差はある程度残る。
新築時以上の修正には限界がある。
2)塗装のカタログと現地塗装の差異
既存塗膜の凹凸模様により、カタログ見本のような仕上がりにはならない(カタログはフラットな面に施工されている)。
現況に合った塗装方法・塗装仕様を提示し、カタログとは差異があることを理解してもらう。

3)衝撃を受ける塗装保証
自転車のラックやエレベーター扉のコーナー部分等、日常の利用で摩耗・衝撃を受ける塗装部位は施工完了後、短期間で塗装の剥がれが生じ、剥がれ部分から発錆することがある。
摩耗・衝撃に対しての性能保証には限界があるといえる。

53-09-034)窓建具リニューアル後の結露
アルミ窓建具をカバー工法で改修するケースで、断熱性の高いペアガラス等の利用が多くなっている。しかし、一般的にはアルミ窓枠までは断熱処理を行っていない。
また、窓建具改修を行うことにより、気密性が高くなる(隙間風が少なくなる)ことから湿気が溜まりやすくなり、室内換気が悪いと窓面以外の壁面等に室内結露が生じやすくなる。

(大規模修繕工事新聞 2014-5.5 No.53)

 

『精度の限界』 大規模修繕工事の出来栄え・保証・精度に関して事前に知っていただくために 2011年8月1日発行 A5判・全52ページ ・1,200円(税込)
『精度の限界』
大規模修繕工事の出来栄え・保証・精度に関して事前に知っていただくために
2011年8月1日発行
A5判・全52ページ ・1,200円(税込)

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