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「隠されている『工事失敗』の現実パート1

66-8-1 4月26日㈰、東京・京橋の㈱住宅あんしん保証本社会議室で全国建物調査診断センターと建物修繕技術協会が主催し、毎回好評を博している管理組合役員勉強会を行いまし
た。その1部として、㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)佐藤成幸専務取締役が講師を務めた「隠されている『工事失敗』の現実」を紙上採録します。

事例紹介① 工事監理、施工者選定の失敗

物件概要:SRC 地下1階地上8 階建て・243 戸

経過
築後21年目に2回目の大規模修繕工事を実施した。マ
ンションはタイル貼り仕上げの外壁で、工事に先立ち、建物調査として手の届く範囲でテストハンマーによる打診を行った。
一般的な要領に習い、足場等の仮設設備を用いずに歩行可能な範囲を打診したところ、浮きなどの不良は経年程度の発生で、1回目の施工後も良好に対処されている状態が
確認できた。
しかし、実際に足場を仮設したところ、妻壁や高所、目の届かない範囲でのタイルの浮きが極端に多いことが判明。詳細な調査の結果、実は1回目の施工でのタイル浮きの注入工法がずさんであり、削孔しただけで注入せずに蓋をしている個所があちこちで発見されたのだった。
結局、1回目の大規模修繕工事では、だれでもわかる部位はきちんと注入固定をしたが、目の届きにくい個所や足場がなければわからない個所はほぼ全数にわたり注入していない、意図的な手抜き工事であったのだ。
1回目の大規模修繕工事は築後8年目。マンションを建設した元施工の会社がどうしてもやらせて欲しいとのことで実施した。第三者による工事監理は行われなかった。
工事費用についても、2回目の大規模修繕工事より約20%割高であったという。

事例紹介② 工事仕様の選定での失敗
物件概要:SRC 地下1階地上10 階建て・161 戸

経過
築後10年目に1回目の大規模修繕工事を行った。
その際にアルミ手すりの支柱に何らかの材料を充填したらしい。ところが、数年経過後から手すり支柱個所に不具合が発生。その対処を検討してきたが、何を充填したのか
わからないため対処法もなく、管理組合の悩みの種であった。
そこで弊社に相談があり、調査を実施して実態解明と改修方法を提案することになった。
詳細な調査において、当初の充填材料は不明だが、その性質から手すりの取り付け状況や構造ならびに部材との相性、適合性をよく確認をせず、とにかく充填をするだけし
たため、化学変化による膨張を発生させたものではないかと推測。管理組合に回答した。
材料と工法の選定にかかわるミスと判断されるものである。

事例紹介③ 合意形成と広報に関する失敗
物件概要:SRC 地下1階地上5 階建て・58 戸

経過
築後10年目に1回目の大規模修繕工事を行った。調査、設計、施工者選定まで行ったコンサルタント会社を急きょ解約して弊社が工事監理を行うことになった。
ところが工事が進行するうち、居住者からの意見や質問事項が増大し、現場代理人はその対処に追い回されるようになった。
内容は「この部位はなんで工事しないの?」「外壁工事はこれで終わり?まだ塗装しなければダメでは?」「なぜこの色に塗るの?」「この部位を工事する理由は?」等々、
いずれも工事内容に関する基本的な事項ばかり。
途中からは居住者同士の意見も「こっちが先だ」「ここを工事してほしい」などと錯綜し、工事に進捗がままならなくなり、ついには工事をストップせねばならない状況に
なった。
個別の、場当たり的な対応ではなく、工事途中であるが公開での説明会を開催し、工事内容の説明と工事に意義ならびに意見徴収を図るよう、管理組合に提案した。
原因は、検討段階での情報公開や広報、説明会や総会での工事に関する報告が非常に不十分であったために起こった混乱であった。前任コンサルタントからの助言もなかっ
たという。
(大規模修繕工事新聞 第66号)


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