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大規模修繕工事【本音ズバリ】セミナー 「管理組合合意形成の真実と研究」

72-15-12-15 10月25日、東京・京橋の㈱住宅あんしん保証本社会議室で全国建物調査診断センターと建物修繕技術協会が主催し、22回目となる大規模修繕工事【本音ズバリ】セミナーを行いました。さらに11月29日には大阪の関西ペイント本社で関西圏2回目となるセミナーを行いました。
この中から㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)佐藤成幸専務取締役が講師を務めた「管理組合合意形成の真実と研究」の一部を掲載します。

72-15-12-11-2事例紹介① 資金不足で対立、工事を休止積立金値上げと貯蓄で合意を得る

物件概要:RC造・地上6階建て・19戸

経過
平成13年3月に竣工した新築マンションで、築後11年目に大規模修繕工事の計画がスタート。平成24年に建物調査診断を実施し、その後引き続いて工事計画に基づいた設計を作成した。
ところが工事費用の予算に対し、修繕積立金が大きく不足しており、この工事資金の徴収方法を巡って、理事、区分所有者の意見が二分しかねない事態に陥ってしまった。
合意形成のための手法
あらかじめ決定していた大規模修繕工事計画スケジュールの進行を一旦休止して、直近の「大規模修繕工事ありき」の資金確保だけの議論を凍結させた。
その後、改めて長期修繕計画を作成・説明した上で、中長期的な視点から修繕積立金が不足するという認識を区分所有者全員が共有するように努めた。
そこから修繕積立金の値上げと貯蓄する期間を設けた結果、合意形成が図れて2年半後の平成26年から大規模修繕の着工にたどり着いた。
背景と考察
目の前の金銭負担の対立が工事実施の是非の対立になる構図を避けた。休止期間を設けることで、じっくりとした説明と深く考える機会ができた。
その結果、やはり大規模修繕工事はそもそも必要であるという共通認識を持たせることができた。

事例紹介② コンサルタント会社を急きょ解約大切なのは検討段階での情報公開や広報
物件概要:SRC造・地下1階地上5階建て・58戸

経過
築後10年目に第1回大規模修繕工事を実施。調査、設計、施工者選定まで実施したコンサルタント会社を急きょ解約して、別のコンサルタントへ工事監理のみ委託した。
ところが工事が進行するに従い、区分所有者からの意見や質問事項がどんどん増え、その対処に本来業務でない施工会社の現場代理人が追い回されることが続発した。意見や質問の内容は「この部位は工事しないのか?」「外壁工事はこれで終わりか、まだ塗装は途中ではないのか?」「なぜこの色で塗か?」「こ
の部位を工事する理由は何なのか?」等。いずれも工事内容に関わる基本的な事項ばかりであった。
現場代理人は個別回答を行っていたが、「ここを工事しないのか?」「やるならこっちだ」などという意見が工事中に錯綜し、管理組合内での住民対立となった。
合意形成のための手法
工事が進むことに不安感と不信感が発生するので、一旦工事をストップさせた。場当たり的な対処ではなく、今さらではあるが公開での説明会を開催し、工事内容の説明と工事の意義、意見徴収を図るように提案した。
背景と考察
原因は検討段階での情報公開や広報。また説明会や総会での工事に関する報告が非常に不十分だったために起こった混乱だった。前任コンサルタントからの助言もなかったという。

事例紹介③ 独断修繕委員長の横暴収めようという良識派の対応がアダに
物件概要:RC造・地上14階建て・132戸

経過
修繕委員長が独断専行、専横主義的な人物で施工者選定前に突如コンサルタントを解約した。その後、委員長が強硬に推薦する施工会社、工事監理会社が採用された。
合意形成のための手法
修繕委員会では委員長一人が多数決合議に反対。怒鳴りしらした上、退席により議事進行をボイコットした。このため、これを収めようとした良識派の委員らが多数決意見を撤回して、理事長にしたがった。
背景と考察
問題点は、委員長が推薦した施工会社が管理組合と契約している施工後のアフター点検、手直しに全く対応しなくなった点。
工事監理者に至っては建築士事務所でもない会社で建築士もいない素人会社であった。工事完了後に委員長は即座に引っ越したという。
合意形成のために良かれと思った良識ある委員の人々の対応がアダとなった例である。

事例紹介④ 機械式駐車場工事で頻繁な入れ替え移動日頃のコミュニティーで工事もスムーズに
物件概要:RC造・8棟・444戸

経過
機械式駐車場480台分の主要部品、構造部材の塗装工事を実施した。マンションの近隣に空き駐車場が十分にないため、敷地内スペースや契約駐車場内で入れ替え移動を頻繁に繰り返して工事実施の計画を立案せざるを得なかった。
工事期間は22カ月に及んだが、駐車場契約者同士の協力が得られてスムーズに工事の進行ができた。
合意形成のための手法
日頃から住民同士の頻繁な付き合いやコミュニケーションが醸成されている環境があった。このため、駐車場契約者以外でも自分のことのように工事を意識して助け合い、協力体制が自然とできあがっていた。
背景と考察
消防訓練や夏祭り、クリスマス会、新年会等、管理組合と自治会組織の合同イベントを実施している。理事会任期終了時には親睦会を開催しているが、ファミリー参加も行っていた。その他でも老人会や趣味のゴルフ会、子ども会など多数の親睦会があり、そのための集会室利用等、コミュニティー形成ができ
ているからこそ、工事の合意がスムーズにできた好例である。
(大規模修繕工事新聞 2015-12 No.72)


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