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全建センター第33回大規模修繕工事本音セミナー 3/25 

全国建物調査診断センターは3月25日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第33回大規模修繕工事本音セミナーを開きました。今回は川崎市のパークシティ溝の口から自治会長の山本美賢氏を招き、近隣マンションとの連携によるコミュニティ形成をテーマに講演を行っていただきました。
講演後は、会場の参加者とともに活発な質疑応答や意見交換を行いました。毎回大好評を博す本音セミナーから、今号では会場との意見交換の様子をまとめました。<構成:編集部>

パークシティ溝の口管理組合の紹介
所在地/川崎市高津区
物件概要/1984年(昭和59年)竣工・SRC造・15階建て・12棟・1,103戸
・都心へのアクセス、ショッピング等の利便性と、緑豊かな自然のバランスのとれた環境から「資産価値の下がらない優良物件」として周囲に認知されている。
(参考)築34年目で76.8㎡の価格が約5,000万円という物件情報あり
・2005年に立ち上げた修繕委員会による資産価値維持活動は、筑波大学の「マンション再生の成功事例」でヒアリング調査を受けるなど、高い評価を受けた。
・防災・減災・高齢化対策として、住民防災組織による「災害対策名簿」を整備。「安心・安全な暮らし」のために住民自ら積極的な活動を行っている。
・「SUUMO新築マンション首都圏版」の特集ページ「個性派21選!『名作マンション』の秘密」に、家と人の老いに向き合い「築100年」を目指すマンションと紹介された。

会場の参加者との質疑応答や意見交換 「コンサル」「自治会」「高齢化」etc.

純一郎・全建センター理事

 パークシティ溝の口管理組合
山本美賢自治会長

 パークシティ溝の口

マンション専門のコンサルについて
会場 大規模修繕工事は管理会社等の施工会社と、設計コンサルタントに頼むというのが多いと思います。マンション専門のコンサルタント会社はどのくらいありますか?

菅氏 個人事務所から大所帯のコンサルタント会社まで、またどの程度マンションに関わっているかによって、数はわかりませんが、マンションだけに特化したコンサルタントは数十社だと思います。
そこで言いたいのは、いい設計をしてほしいとか、いい工事を担保してもらいたいとかを設計コンサルタントに望まないほうがいいということです。
実績があって信頼できる施工業者を選べて、管理組合が望んでいる工事仕様をきちんとやってくれて、さらに安ければもっといいのだろうけれど、そういうことが管理組合自身でできれば、設計コンサルは必要ないんじゃないですかということです。
設計コンサルを雇うことで、そこから何か得られるかと期待しても、必ずしもそうとは限らないんですね。
だから、本質に戻る必要があるんです。管理組合にとって何が必要なのか、何を求めているのか。管理組合が求めていることを理解する必要があるのです。
問題はお金がないのか、先頭に立つ人材がいないのか。私がそこに解決案を提示してあげると、よく納得してくれます。
つまり、管理組合から求めることをリクエストして、それにどう設計コンサルが応えるのか、そこに期待するのも設計コンサルを選ぶ、ひとつの考え方でしょう。

自治会加入について
会場 山本さんにお聞きします。自治会活動の経済基盤を作るのはどうされているのですか?強制加入ですか、それとも任意加入ですか?

山本氏 実は、パークシティ溝の口では自治会の加入を巡って裁判になったことがあって、自治会が負けているんです。


<参考>自治会設立当初から自治活動費を管理組合会計から自治会に支出してきた。その後、自治会と管理組合との間で自治活動について業務委託契約が結ばれてからは業務委託費として自治会に支払われてきた。
つまり自治会費を別に徴収せず、管理費から自治会費相当額(戸当たり月額200円)を自治会費に充当していたのである。これに対し、自治会から脱退した2戸の組合員が自治会費相当額の支払い義務がないこと、脱会後3カ月分の返還を求めて提訴した。
判決は管理組合から自治会への業務委託費は認められたものの、自治会からの脱退、自治会費相当額の返還についても認定された。【東京高裁・平成19・9・20】



山本氏 今も自治会が管理組合からコミュニティ形成を委託されているという形をとっています。費用も管理組合から予算をいただいています。

会場 自治会の財政基盤をどう確立するかで頭を悩ませています。自治会への加入率は50%とか70%というのが一般的だと思います。そこをどう解決されているのですか?

山本氏 裁判後も自治会からの脱退は2戸から3戸になったたけで、1,100戸が自治会に加入しています。裁判にはなったけれど、自治会に入っている方は35年前から変わらないので、財政基盤の問題はありませんね。
全国的に自治会加入率が社会問題になるほど減っているようですが、現在ではやはり、防災・減災が他人ごとではないことに力を入れてはいかがでしょうか。

会場 防災組織を整えたり、大震災に対して何をするかとなっても、自治会への加入が少ないから予算措置ができないという矛盾が生じます。それが一般マンションの現実なのではないでしょうか。

菅氏 防災活動の立ち上げでは、まず予算を立てて備蓄品でどうにかしようと発想をはじめることがNGです。
防災は自助、共助とあるのはみなさんご存じだと思いますが、家具の転倒防止や、水、食料、トイレの確保も本来、自分でやるべきことです。
マンションの防災組織の呼びかけとして、自立して備えをしましょうということからはじめてはいかがでしょうか。

住民の高齢化について
会場 築35年では、住民の高齢化も進んでいると思います。独居老人の見守りなどはどうされていますか?

山本氏 マンション内の民生委員4人が定期的に単身高齢者の住戸へ訪問しています。
また、サークルでデイケアのようなことをしてくれるボランティアがあるので、このサークルと地域包括支援センターと民生委員の3者でタッグを組んでいます。
マンション内での活動が目立つようになると、行政がフォローしてくれることが割と多いような気がします。

マンションでは2年前に災害対策用の居住者名簿を作りました。
防災の勉強会をやって、今自分との連絡先はだれだれである、いざというときに支援はいるかいらないか、行政の要支援者制度に入っているか、という名簿を作って、それをファイリングして封印して金庫の中に保管しています。
名簿の回収率も96%あって、ちょっとびっくりしました。

大規模修繕工事時の施工体制について
会場 うちのマンションは新築時の外装工事について、施工不良があり、そのためにタイルがよく剥離する現象が起こります。大規模修繕工事時には、どういう施工体制をとるのが理想と考えますか?

菅氏 多くの大規模修繕工事では実費精算でやっています。
調査のために足場を組むことができれば一番いいのですが、一般のマンションでそんなことをやっていたらお金がいくらあっても足りないので、手の届く範囲で打診を行い、それを全体の面積にかけ直して、欠損部分の全体数量を想定します。
あくまで想定で、足場をかけた後の実数が違うことがあるため予備予算をだいたい10%くらいみています。<8pに関連記事>

会場 外壁にタイルを貼っている、建物の真ん中に立て管を通しているのは日本だけ。マンションが何年持つかということがわからない。大規模修繕工事を何回繰り返せば建替えなのかというテーマをセミナーで期待しているのですが。

菅氏 とはいえ建替えありきの政策をしているのも日本だけです。タワーマンションで湿式タイルを貼っている国はないですよね。なぜそうしないか。タワーマンションでタイル貼っていたら剥がれるから危ないんです。
日本では、そういうマンションに住んでいるということを注意していかなきゃならない。だから、修繕や建替えなどをもっと研究し、うまく付き合っていかなければならないと思っています。
(大規模修繕工事新聞 101号)


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