ゲリラ豪雨による駐車場冠水被害
予見できない自然災害、自分で守る対策を
【当事者】
原告:区分所有者X1、X2
被告:管理会社A
【主文】
・原告らの請求をいずれも棄却する。
・訴訟費用は原告らの負担とする。
【事案の概要】
原告X1、X2がマンションの機械式駐車場に所有する自動車をそれぞれ所有していたところ、平成30年8月27日午後8時頃から9時頃にかけての集中豪雨により、駐車場が冠水して自動車が水没する事故が発生したため、管理会社Aが緊急出動等の義務を怠ったなどと主張して、管理会社Aに対し、不法行為による損害賠償請求を求めた事案。
機械式駐車場は中段、下段が地下に収納される3段式で、X1、X2の区画はいずれも中段に位置していた。
【原告の主張】
・管理会社Aは、管理委託契約に基づき、異常発生時に管理員等を緊急出動させ、駐車場のパレットを上昇させるなどの適切な措置を講ずる義務を負う。
・午後8時26分に機械式駐車場の排水槽異常信号を受信した後、セキュリティ会社への連絡を試みるばかりで、フロント担当者がマンションに到着したのは、午後11時であった。
・このような管理会社Aの対応は、警備業法で定められた機械警備業者の即応体制に関する規則に反するものである。
【被告の主張】
・駐車場は遅くとも午後8時45分には冠水していたのは明らかである。
・排水槽異常信号を受信したのは午後8時26分であるから、19分で冠水したことになる。
・このように、本件は極めて短時間のうちに集中かつ多量の降雨が発生したゲリラ豪雨の事案である。
・事故当日、異常な件数の警報等への対応に追われる中で、現場の状況を把握できず、信号受信後
19分で現場に赴き、適宜必要な対応をすることは不可能であり、事故を回避できた可能性は皆無であった。
【裁判所の判断】
・X1、X2は、管理会社Aには緊急出動義務違反、異常発生時の通知義務違反および事前の説明・提案義務違反があると主張するが、本件事故の発生を具体的に予見することができない限り、上記のような注意義務は生じないというべきである。
・本件集中豪雨による雨量は、東京管区気象台が記録的短時間大雨情報を発表していたこと、駐車場だけでなくマンションの屋内にも浸水等の被害が生じたことからすると、事前に予測することが困難なものであったということができる。
・本件駐車場の排水設備が、事故当日も正常に稼働していたことが認められること、マンション竣工から16年間、駐車場の冠水事故がなかったことからすると、近隣の敷地や前面道路からの雨水の流入、下水道からの雨水の逆流といった要因が重ならない限り、本件駐車場が冠水することはなかったと認められる。
・本件駐車場の排水槽異常警報は、下段の区画パレットの下部に設置された排水槽が満水になったことを示すものに過ぎず、駐車場の地下部分全域に冠水の危険が及んでいることを意味するものではない。
・したがって、管理会社Aに事故の発生について予見可能性があったとは認められず、X1、X2の主張するような注意義務違反があったということはできない。
・また、管理会社Aが、排水槽異常警報を受信後直ちに、本件駐車場の使用者等に対してその旨の通知をすべき義務を負っていたということはできない。
・以上によれば、管理会社Aが排水槽異常警報を受信した後、緊急出動せず、駐車場使用者等に通知しなかったことをもって、X1、X2に対する不法行為を構成するということはできない。
【コメント】
判決文から、管理会社Aを訴えたのは管理組合でなく、区分所有者X1、X2の2人だけだということがわかります。同じく被害にあった駐車場使用者等がまとまって管理組合に相談し、管理組合として管理会社を訴えたということではないということです。
記録的なゲリラ豪雨の被害に対して、2人しか訴えていない時点で、X1、X2のエゴイストぶりがうかがえます。
カスハラ条項が盛り込まれている管理委託契約書(※1)であれば、区分所有者には当事者適格がないとして、今後の裁判では却下される可能性も否定できません。
予見できない災害に対しても事故の原因は管理業務の一部だったと言って、管理会社に「お任せ」し、責任を問うような考え方も疑問です。
本件事故の場合、住民のだれかが機械式駐車場のパレットを上昇させておけば、冠水することはなかったのではないでしょうか。
近年の自然災害は、予見可能性を超えるものが非常に多くなっています。大震災もいつ発生するかわかりません。
地域的な自然災害が起きれば、住民も、管理会社社員も、行政職員もだれもが被害者になります。
近年は大型台風、ゲリラ豪雨が頻発しています。予見できない自然災害があることも想定して、自分の身は自分で守る対策を講じておきましょう。防災対策は管理組合の業務でもあります(※2)。
※1)令和5年9月にマンション標準管理委託契約書が改訂され、カスタマー・ハラスメント対策として、管理会社に対する管理事務に関する指示は管理者か指定された役員が行うとする条文が新設されました(第8条)。現行では、個々の区分所有者が管理会社にクレームをいうことは契約違反になります。
※2)マンション標準管理規約第32条十二号参照
大規模修繕工事新聞 2025-9月 189号





