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「漏水トラブル」で区分所有者が役員個人を提訴 / 個人的対立による役員の法的責任認めず、全面棄却

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令和6年6月25日東京地裁 損害賠償請求事件

【当事者】

原告:区分所有者であるX社、X社代表取締役X1
被告:当時の理事長Y1、理事Y2

【主文】
原告の請求をいずれも棄却する。

1  事案の概要
 本件の舞台となったのは、昭和52年竣工・全10戸の小規模マンション。平成29年6月、1階店舗(区分所有者X社)の天井から大量の漏水が発生しました。上階の浴室排水管および屋外共用排水管の詰まりによる逆流が原因です。
そこで、X社は、管理組合の理事長を務めていた被告Y1、理事であったY2に対し、以下の理由で損害賠償を求めました。

【原告の主張】
 清掃義務の懈怠:平成21年以降、約8年間にわたり排水管清掃を怠った。被告らには善管注意義務違反があり、これにより、原告は損害を被った。
総会招集の排除:平成23年から令和3年11月まで、X社にだけ意図的に総会の招集通知を送らなかった。X社が出席していれば、排水管清掃業務は定期的に履行され、本件事故の発生は防止できた。

【被告の主張】
 嫌がらせ行為:X社は長期にわたり管理費を一切支払わず、代表取締役X1が総会に参加した際は、他の住人らと言い争いになり、同人らへの嫌がらせを行うなどして、本件管理組合の運営に重大な支障が生じたため、総会の招集通知を停止した。
 原告請求の背信性:管理組合が排水管清掃を実施できなかったのは資金不足によるものであり、その要因の1つは、X社が一度も管理費・修繕積立金を支払わなかったことにある。そのようなX社が、個人である理事長Y1らに対して本件請求をすることは、著しく信義に反する。

 裁判の争点は、手摺りの変更が、区分所有法で定められた「特別の影響を及ぼすとき」に該当するかどうかでした。もし「特別の影響」があると認められれば、不利益を受ける区分所有者の承諾が必要になります。
 裁判所は、確かにパネル化によって日照や眺望が以前より悪化したことは推認したものの、以下の理由から原告Xの請求を棄却しました。

【争点】
 この裁判での最大の争点は、「管理組合の役員は、個々の区分所有者に対して直接責任を負うのか」という点であるといえます。裁判所は、区分所有法および管理規約に基づき、管理者は「区分所有者団体(管理組合)」との間で委任関係を持つが、「個々の区分所有者との間で個別に委任関係を有するとは解釈できない」と判断しました。
 つまり、役員が負う善管注意義務は、あくまで「管理組合という組織」に対するものであり、一組合員であるX社に対して負うものではない、という論理です。
 さらに、不法行為(民法709条等)に基づく責任についても、判断が下されました。
 清掃の実施判断:排水管清掃をいつ実施するかは、組合の財政状況や他の優先事項を考慮した「管理者(理事長)の裁量」に委ねられる。X社が長年管理費を滞納していた背景もあり、清掃未実施が直ちに違法とはみなされなかった。
 総会招集通知の漏れ:通知をしなかったこと自体は「任務懈怠」と認められたものの、仮にX社が総会に出席していたとしても、それによって直ちに清掃が実施され、事故が防げたという「因果関係」は認められないとされた。

【結論】
 東京地裁は、X社が主張する理事長Yらの債務不履行および不法行為のいずれも認めず、請求を全面的に棄却しました。

大規模修繕工事新聞 2026年10月 202号


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