「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

マンション設備の改修 <事例と解説> マンション設備のこぼれ話

管理会社の提案で 全く効果のない工事の実施も!?

全国建物調査診断センターに寄せられた相談で、「?(は てな)」のつく事例を紹介します。ただし、管理組合のみ なさんが気づかないだけで、実はよくある例です。

■事例マンション
・埼玉県Cマンション
・1979年2月竣工・SRC造
・8階建て
・113戸
・修繕履歴
1.1995年:量水器回り給水管交換、高架水槽回り配管更新、揚水ポンプ交換
2.1996年:受水槽、高架水槽交換
3.1998年:給水管更生
・相談内容
 管理会社へ長期修繕計画の見直しを依頼したところ、いきなり来年に給水管更新、直結増圧化、排水管更生工事を実施する 項目を入れてきた。
 総額1億円かかる工事計画である。管理会社も、管理会社が 連れてきた業者も本当に施工能力があるのか信用できない。
 そこで全建センターに無料調査診断を実施してもらい、管理 会社の長期修繕計画が本当に正しいのかどうかを知りたい。


管理組合ファーストのパートナー選びを


・全建センターからのアドバイス
 屋外に設置されたFRP製の水槽は一般に20年~ 30年で迎え ますが、当該マンションで調査診断したところ、1996年(竣工17年目)で受水槽、高架水槽更新は、やはり早すぎたようです。
 また1998年(竣工19年目)で行っ た給水管更生は実際は不要で、竣工40年目にして提案された排水管更生についても、やっても意味がないと思われます。
 雑排水管に使用されている排水銅 管は腐食しにくく、また銅イオンの 効果により、内面に汚れがつきにくい特性があります。このため当該マンションも更生工事の必要がないと判断しました。
 検討に値する工事は更生後20年 以上経過している給水管の更新。同時に直結増圧化を実施すれば、新築マンションと同様の配管経路が実現できます。
 管理会社が提案していない 工事では、最上階の伸頂通気 管、炭素鋼鋼管のネジ接合部 が腐食しているため、その部分のみの更新工事です。
 全建センターとしては、管理会社は修繕履歴から今回の工事計画提案まで、会社の利益ファーストで適切な修繕アドバイス をしているとは思えないと助言しました。
 情報をよく集め、管理組合ファーストで考えてくれる、信頼できるパートナーを選択しましょう。

<文/全国建物調査診断センター・ 給排水設備担当:淵上>

(大規模修繕工事新聞 117号)

雑排水管に使用されている 排水銅管

最上階の伸頂通気管部分のみ更新する