こうした給排水診断と工事提案にご注意を!
管理会社や悪質なコンサルタント、工事会社によっては、独自の給排水診断の結果から管理組合に対して大きな工事の提案をすることがあります。全国建物調査診断センター(全建センター)による第三者の視点からみると、こうした提案は管理組合の悩みや実際の問題点と異なるケースがよくあります。問題解決にならない提案は会社の利益重視主義のたまものです。
管理組合としては安易な給排水診断からの提案を信じず、全建センターのセカンドオピニオン制度の活用をご検討ください。
(提案1)「 給水管が腐食しています。早急な工事が必要です」
<全建センターの見解>
・ 腐食部分の原因はたいていが「異種金属接合部」にあります。メーター回りや系統バブルのつなぎ部分ということになるので、給水管自体の腐食を疑うのではなく、「異種金属接合部」の確認が先決です。
・「 異種金属接合部」の腐食から「すべての給水管の更新が必要です」と結論付け、大規模な更新工事に導く提案があっても、「異種金属接合部」の腐食部分だけ取り換えればいいケースが多くあります。
異種金属接合部
(提案2)「 排水管内部が減肉しています。早急な工事が必要です」
<全建センターの見解>
・ 鋼管系の排水管は発錆の影響で、管の内面が減肉(擦り減る)していきますが、「減肉しています。早急な排水管更新工事が必要です」と結論付け、大規模な更新工事に導く提案がありま
す。
・ 確かに発錆の影響による管の減肉はありますが、管の真ん中あたりでピンホール(穴)があくことはあまり考えられません。
減肉により漏水が起こるのは継手部分だけです。すべての排水管を更新する必要もないケースがあります(ただし埋設管は管にピンホールがあくケースあり)。
管内部の写真
(提案3)「 水槽から漏水しています。早急な直結増圧化工事が必要です」
<全建センターの見解>
・ パネル組立型(FRP)の水槽はボルトやパッキンで組み立てているため、涙漏れ程度に漏水する場合は多々あります。
・ 漏水は内部シール部材等を取り換えるだけで止水する場合があります。
・ 発生した漏水を口実に、直結増圧化工事を提案する会社があります。しかしFRP水槽の耐用年数は約30年。できるだけ長く使用してから直結増圧化工事を検討したほうが、経済的だと考えられます。
<文/全国建物調査診断センター・ 給排水設備担当:淵上>
(大規模修繕工事新聞 119号)
受水槽の涙漏れ