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Data. 1 なぜ説明責任を果たさないのか―

なぜ説明責任を果たさないのか― 管理会社から返答なく、契約解消へ

「今回で最後になりますね」―昨年8月、竣工以来40年以上にわたって管理を委託してきた業界最大手のT管理会社との最後の理事会だった。
「何度も言いますが」。理事会の言い分は一貫している。「私たちが御社に求めているのは、大規模修繕工事の瑕疵に対する説明責任です」。
2010年に3回目の大規模修繕工事を実施。その後、屋上防水や鉄部での施工不良が顕著になった。管理組合は施工したT社に工事の瑕疵を追求した。しかし、T社は大規模修繕工事の瑕疵であると認めているのかいないのか、あいまいな回答を繰り返すばかり。管理組合は「具体的な説明を」と再三求めてきたが、最終的に管理会社を変更せざるを得ないという判断に至った。
実は管理組合では2016年、T社が下請け業者に業務を丸投げしたままにしないこと、大規模修繕工事に起因する保証を相互に確認することを条件に、管理委託契約の継続を決めている。
それから3年。両者の関係は改善されなかった。T社の対応はいつまでたっても「のれんに腕押し」だった。そして、ついに契約解消という結果になってしまったのだった。


 管理組合が工事の瑕疵だと主張しているのは、屋上防水の立ち上がり部分や鉄部塗装の部位。
屋上防水の立ち上がり部の裏側は塗装不良68カ所を確認した。
 共用廊下の手すりの鉄部は、大規模修繕工事の6年後ですでに錆でボロボロ。手すりの最下部を点検鏡で確認すると、塗装されていないことが明白だった。
 しかし、T社工事部長名で送られてきた「大規模修繕工事後7年目点検報告」、委託契約に含まれる毎年の「健康診断報告書」にも管理組合が問題視している個所への回答には一切の記載がない。
 そして管理組合の追求に、さらにT社は驚くべき対応をとる。「未塗装部分については、その塗装費用を換算し、返却します」。
 管理組合だけが問題視している部分のお金は返すから、管理組合で勝手に直せといってきたのだ。
 管理組合としてはもちろん納得できない。大規模修繕工事は請負業務。失敗したから金を返すといわれても、T社には信頼関係をもとに発注してきたはずだった。
 最後の理事会である理事がさらに追求した。「それでいいんですか?それが御社の回答で仕方ないのでしょうか?」。
 T社担当者が歯切れ悪く答える。「個人的に答えづらいのですが、誠意はないなと思います」。
 とはいえ、彼の立場としてはあくまで「大変申し訳ないのですが、会社としての回答として出しています」。サラリーマンとしてそう言わざるを得ない、苦しい状況であったことは想像に難くない。


 「御社に求めているのは、何度も言いますが説明責任です。管理組合としてこれだけ要請しているにも関わらず、一度たりとも説明に来ない。話し合いをしようともしない。それが一番の問題です」「営業部と工事部が全く違う
のであれば別会社にすればいいじゃないですか」「不信感があるから説明に来てと言っていることに対して何も返事がないからこういうことになっているんです」―管理組合が求めているのは話し合いの場を持ち、納得する説明をしてもらいたいだけ。工事が完了していないのに完了したと主張している、さらに「未塗装部分の工事費用は返金します」とはどういうことか。
 とはいえT社の反応はあくまで鈍い。「責任は工事部が握っているというか、そこが動かないと…」。やはり、どうしても“逃げ”の回答しか持ち合わせがない。
 管理組合は「話し合いをしないで問題を解決しようというのは無理がある」とし、管理会社を変更した今も、“前”T社からの対応を求めていくつもりだ。

大規模修繕工事新聞(122号)

●マンション建物概要
・1975(昭和50)年9月竣工
・SRC造・1棟・7階建て
・全76戸


●大規模修繕工事履歴
・第1回 1988年6月
・第2回 2000年6月
・第3回 2010年5月
 ※施工はすべて委託管理会社へ発注


●管理会社変更までの経緯
・ 1975年9月竣工以来、日常の維持管理や大規模修繕工事すべてを管理会社に委託。
・2010年5月、第3回大規模修繕工事を実施。
・ 2016年1月、第40期理事会で漏水痕や鉄部塗装工事の瑕疵を管理会社に指摘。
・ 2016年7月、管理会社が瑕疵を認める。この頃から管理組合内部で建物管理や工事についての関心が高まる。
・ 2017年6月、理事数人で各所の目視点検を行い、管理会社にその結果を指摘した。
 ①鉄部のネジ山が塗りつぶされている。
 ② PS扉等、扉を閉めたまま塗装された個所があり、塗料のはがれ、開閉がしにくくなった。
 ③共用廊下手摺、H鋼に錆が発生。
 ※管理会社へ説明を求めるも納得のいく回答なし。
・ 2017年11月、管理会社工事部長名で「大規模修繕工事後7年目点検報告」が送られてくるも、管理組合が問題視している個所への回答は一切なし。
・ 2018年5月、管理会社工事部安全品質推進課より、補修工事を行う旨の連絡が来るも、管理組合が問題視している個所への回答は一切なし。
・ 2018年10月、第三者の専門家に依頼し、建物診断を実施。
・ 2019年2月、弁護士に管理会社への瑕疵担保責任等を相談。
・ 2019年3月、管理会社社長あてに鉄部塗装、屋上防水の再調査と、その結果に基づく回答と説明を要請。
・ 2019年5月、管理会社より「未塗装部分について、その塗装費用を換算し、返却を考えている。屋上防水について、不具合個所はない」と回答あり。
・ 2019年9月、管理会社を変更(住み込み管理→通勤管理)。

点検鏡で共用廊下の手すりの裏を確認。錆でボロボロ

同じく点検鏡で確認すると、塗装されていないことが明白

大規模修繕工事の6年後、鉄部はすでに
錆で穴が空いている