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長期マネジメント計画の手引き ハード・ソフト両面の現状を確認 60年後のマンション像の取り組みへ

  公益財団法人マンション管理センターは2020年8月、国土交通省総合技術開発プロジェクト(マンション総プロ)で提案された「長期マネジメント計画」をベースに「マンションの長期マネジメント計画策定の手引き(案)」を公表しました。とはいえ、1年経た今も管理組合に浸透していないのが実状です。
 ここでは、その「長期マネジメント計画」の概略に少し触れてみましょう。詳しくはマンション管理センターのホームページから「マンションの長期マネジメント計画策定の手引き(案)」を閲覧できますので、参考にしてください。

大規模修繕工事新聞 140号 

■長期マネジメント計画とは
 長期マネジメント計画は、マンション管理適正化指針等で規定している一定水準の管理を実現できている管理組合について、大規模改修や再生等の事業の円滑な実施や適切なマネジメントに際して円滑な意思決定が期待できるよりレベルの高い水準の管理組合に誘導するための計画として適用するものです。

大規模修繕工事新聞(140号)

 長期マネジメント計画を策定するには、マンションのハード・ソフト両面の現状を確認し、長所と言えるポイントや問題点、課題と考えられるポイントなどを把握する必要があります。
 次ページに「マンションの長期マネジメント計画策定の手引き(案)」の「竣工年次別のマンションの傾向及び今後想定される課題」から「どんなマンションであれば、中長期的にどんな課題が想定されるか」を引用しました。この表は、現在の建物の確認と、現時点、20年後、40年後、60年後を想定して、取り組み課題をみつけ、検討していくきっかけに利用できると思います。

■チェックシート・取り組みの方向性一覧
 また同「手引き(案)」では、長期マネジメント計画の検討の一例として、チェックシート・取り組みの方向性を一覧にして紹介しています。このチェックシートでは良質なマンションの基本要素と、想定する将来像を4類型あげて、その取り組みの方向性を例示しています。こうした例示を活用することにより、それぞれのマンションが選択した将来像の実現と、それに求められる特徴(条件等)を満たしているかを確認し、良質なマンションへの道を一歩ずつ進めるようになるのです。

 「取り組みの方向性」では、長所を今後ますます伸ばしていくための取り組みや、問題点・課題への対応を図るために検討する上でのヒントとして例示しています。実際には、それぞれのマンションの状況に合った現実的な取り組みが望まれます。

■持続可能な計画策定体制の設置を
 マンション管理センターでは、長期マネジメント計画の策定にあたり、必要に応じて専門委員会を設置するなど、検討を行う体制の構築を勧めています。
 建物の維持管理に関係する部分も多くあるので、修繕委員会等がすでにある場合は、そうした委員会を活用する方法もあります。必要なのは検討の継続性を確保することです。
 メンバーについては、建物や組合運営に関して、必ずしも専門的知識を持っている必要はありません。ただし、自分たちだけの知識では十分な検討ができないところについては、適宜専門家を活用することも考えられます。

 「長期マネジメント計画」は、それぞれのマンションの将来像について「区分所有者間で緩く共有し、将来起きる事態に備えつつ、円滑な管理組合活動を実施すること」を目的としています。区分所有者間で意見を交換し合い、意識の共有を継続していくことは、今後の適切な管理運営のために極めて価値があるものと考えます。
 長期修繕計画に加え、さらに大きな枠でマンションをとらえた「長期マネジメント計画」の存在が広く活用され、良好かつ適切な管理運営を行う管理組合が増加していくことを期待しています。